百人一首71番は、源経信の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第71首の歌
| 和歌 | 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く |
|---|---|
| ひらがな | ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく |
| 読み方 | ゆうされば かどたのいなば おとずれて あしのまろやに あきかぜぞふく |
| 歌番号 | 71 |
| 歌集 | 金葉集 |
| 部立 | 秋・173番 |
| 作者・歌人 | 源経信 |
| 色札 | 緑札 |
意味・現代語訳
日が暮れてくると、秋風が訪れる。風は門の前に広がる田の稲の葉を鳴らし、そのまま、葦で屋根をふいた仮の小屋にも吹きつけてくる。
ひとことで言うと、夕方の秋風が門前の稲葉を鳴らし、葦ぶきの小屋に吹きこむ田園の景色をよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 夕されば | 夕方になると。この「さる」は「去る」ではなく、時が移ってくることを表している。 |
| 門田(かどた) | 家の門の前に広がる田。家のすぐそばにある田のこと。 |
| おとづる | ここでは音を立てること。訪ねてくるという意味もあり、秋風がやって来るようすも重なる。 |
| 芦のまろや | 葦で屋根をふいた、粗末な仮の小屋。題の「田家(田舎の家)」に合わせた言い方。 |
| 秋風ぞ吹く | 秋風が吹いてくる。「ぞ」は意味を強める係助詞で、結びの「吹く」は連体形になる。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 夕 | 名詞 | 夕方 |
| され | 動詞(ラ行四段活用「さる」・已然形) | 時が移ってくる |
| ば | 接続助詞 | 順接の確定条件(〜すると) |
| 門田 | 名詞 | 門の前の田 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 稲葉 | 名詞 | 稲の葉。下に「を」を補って読む |
| おとづれ | 動詞(ラ行下二段活用「おとづる」・連用形) | 音を立てる |
| て | 接続助詞 | 〜て(単純な接続) |
| 芦 | 名詞 | 「あし」と読む |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| まろや | 名詞 | 粗末な仮小屋 |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| 秋風 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意。結びは連体形 |
| 吹く | 動詞(カ行四段活用「吹く」・連体形) | 「ぞ」の結び |
文法のポイント
- 「夕されば」は名詞「夕」に動詞「さる」の已然形と接続助詞「ば」が付いた形です。「さる」は時や季節が移ってくることを表し、已然形+「ば」で「夕方になると」と訳します。「去る」と取り違えないよう注意しましょう。
- 「秋風ぞ吹く」は係り結びです。係助詞「ぞ」を受けて、文末の「吹く」は連体形になっています。四段活用の「吹く」は終止形と連体形が同じ形なので、上に係助詞があるかどうかで判断します。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。夕方になってから秋風が小屋に吹きこむまでを、一続きにうたっています。 |
| 掛詞 | おとづれ | 「音を立てる」と「訪れる」の二つの意味を重ねているとする説があります。技巧をほとんど使わずに景色をよんだ歌とみる解説もあります。 |
作者:源経信
源経信(みなもとのつねのぶ)。百人一首での作者名は「大納言経信(だいなごんつねのぶ)」です。
1016年〜1097年。平安時代後期の公卿で歌人です。民部卿源道方の子で、74番の作者源俊頼の父にあたります。1091年に大納言となり、1094年には大宰権帥を兼ねて翌年に九州の大宰府へ下り、1097年にその地で亡くなりました。漢詩・和歌・管弦のすべてにすぐれ、藤原公任と並ぶ多才な人と評されました。朝廷の儀式や作法(有職故実)にも通じていました。桂に別荘を持ったことから、桂大納言とも呼ばれます。
歌の背景と鑑賞
金葉集の詞書によると、源師賢の梅津(今の京都市右京区)の山荘に人々が集まり、「田家秋風」という題でよんだ歌です。桂川の近くにある梅津には、都の貴族たちが別荘をかまえていました。夕方になると、門の前の田の稲葉が風に鳴り、その秋風が葦ぶきの小屋にまで吹きこんでくる、という田園の夕暮れをうたっています。耳に届く稲葉の音と、肌で感じる風の冷たさによって、秋の訪れがいきいきと伝わってきます。歌の「芦のまろや」は、集まった山荘そのものというより、「田家」という題に合わせて思いえがいた田舎の小屋とみられます。すぐ前の70番「さびしさに」も秋の夕暮れの歌ですが、こちらはさびしさよりも、さわやかさが感じられる一首です。
出典:金葉集(秋・173番)。詞書:源師賢の梅津の山荘に人々が出かけ、「田家秋風(田舎の家に吹く秋風)」という題でよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| ゆうされば かどたのいなば おとずれて | あしのまろやに あきかせそふく |
決まり字は「ゆう」の二字決まりです。同じ「ゆ」で始まる札に、46番「由良のとを」(決まり字「ゆら」)があります。2文字目の「う」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
ゆうの足(雄一も悠太郎も足が速いねぇ)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「夕されば 門田の稲葉 おとづれて」に続く下の句は?
答えを見る
芦のまろやに 秋風ぞ吹く
問2 この歌の決まり字は?
答えを見る
ゆう(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
答えを見る
源経信(百人一首での作者名は「大納言経信」)
問4 「秋風ぞ吹く」で使われている文法事項を答え、「吹く」の活用形を説明しなさい。
答えを見る
係り結びです。係助詞「ぞ」を受けて、文末の「吹く」はカ行四段活用の連体形になっています。「ぞ」は意味を強める働きをしています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:70番 さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
- 次の歌:72番 音に聞く 高師の浜の あだ波は
- 同じ色札の20首:緑札の一覧と練習
- 同じテーマの歌:秋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「金葉集(二度本)」
- 金葉和歌集 巻第三 秋(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」71番
- 百人一首で始める古文書講座(71)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首71 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首071 品詞分解と解説
- 千人万首(やまとうた)源経信
- コトバンク「源経信」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。