百人一首83番は、皇太后宮大夫俊成の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第83首の歌
| 和歌 | 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる |
|---|---|
| ひらがな | よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる |
| 読み方 | よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる |
| 歌番号 | 83 |
| 歌集 | 千載集 |
| 部立 | 雑中・1151番 |
| 作者・歌人 | 皇太后宮大夫俊成 |
| 色札 | 桃札(ピンク札) |
意味・現代語訳
ああ、なんという世の中だろう。つらさから抜け出す手だては、どこにもないのだ。(俗世を離れようと)心を決めて奥深い山にこもってみても、そこまで鹿の鳴く声がもの悲しくひびいてくる。
ひとことで言うと、世の中のつらさから逃れようと入った山奥でも、悲しい鹿の声を聞いて嘆く歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 世の中 | 人が生きている世間。ここでは、つらさから逃れられない現実の世を指す。 |
| 道 | ここでは、つらい世の中から抜け出す手だて。出家して俗世を離れる道を暗に指す。 |
| 思ひ入る | ひたすら思いつめて心を決めること。この歌では、山の奥へ入っていく意味もかけてある。 |
| 山の奥 | 人里から遠く離れた所。俗世を捨てた人がこもる場所として歌によまれた。 |
| 鹿 | 秋に、妻を恋うて鳴くとされた動物。その声は悲しいものとして歌によまれた。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 世の中 | 名詞 | |
| よ | 間投助詞 | 詠嘆(〜よ) |
| 道 | 名詞 | 逃れる手だて |
| こそ | 係助詞 | 強意。結びは已然形 |
| なけれ | 形容詞(ク活用「なし」・已然形) | 「こそ」の結び。ここで文が切れる |
| 思ひ入る | 動詞(ラ行四段活用「思ひ入る」・連体形) | 深く思い込む。「(山に)入る」をかける |
| 山 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 奥 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| も | 係助詞 | 〜も・〜でさえ |
| 鹿 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意。結びは連体形 |
| 鳴く | 動詞(カ行四段活用「鳴く」・終止形) | |
| なる | 助動詞「なり」(連体形・推定) | 音を聞いて推し量る(〜ようだ)。「ぞ」の結び |
文法のポイント
- 「鳴くなる」の「なる」は推定の助動詞「なり」の連体形で、音や声を聞いて「〜ようだ」と推し量る意味です。終止形に付く「なり」は推定(伝聞)、連体形に付く「なり」は断定と覚えましょう。
- この歌には係り結びが二つあります。「こそ〜なけれ」は「こそ」を受けて已然形で結び、「ぞ〜なる」は「ぞ」を受けて連体形で結んでいます。
- 「鳴く」は四段活用なので、終止形と連体形が同じ形です。このような場合は、声を聞いている場面かどうかなど、意味から「なり」の種類を判断します。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | 道こそなけれ | 二句切れ。係り結び「こそ〜なけれ」で文がいったん切れます。初句の「世の中よ」でも軽く切れるとする見方もあります。 |
| 掛詞 | 思ひ入る | 「思ひ入る(思いつめる)」と「(山に)入る」の意味を重ねていると説明されています。心を決めることと、山へ分け入ることの二つが、一語にこめられています。 |
作者:皇太后宮大夫俊成
皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり)。一般には「藤原俊成(ふじわらのとしなり)」とも呼ばれます。
1114年〜1204年。平安時代末期から鎌倉時代初期の歌人で、名は「しゅんぜい」とも読みます。父は藤原俊忠で、子に百人一首の撰者・藤原定家がいます。1172年に皇太后宮大夫となったため、百人一首ではこの官職名で呼ばれています。1176年に重い病気にかかって出家し、釈阿と名のりました。後白河院の命で七番目の勅撰和歌集『千載和歌集』を編集し、1188年に完成させました。歌論書『古来風躰抄』でも知られます。
歌の背景と鑑賞
千載集の詞書によると、「述懐百首」という百首歌をよんだときに、鹿を題にしてよんだ歌です。述懐百首は1140〜41年ごろ、俊成が27歳ごろによんだものとされています。俊成より4歳年下の西行が23歳で出家したのも、ちょうどこのころのことです。当時、つらい世から抜け出す「道」といえば、出家して山にこもることでした。しかし作者は、その山奥にさえ、妻を求める鹿の悲しい声が響いていることに気づきます。悲しみはどこまで行ってもついてくる、という嘆きがこめられています。この歌は、俊成自身が撰者となった千載集に収められました。
出典:千載集(雑中・1151番)。詞書:述懐百首の歌をよんだときに、鹿の歌としてよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| よのなかよみちこそなけれ おもいいる | やまのおくにも しかそなくなる |
決まり字は「よのなかよ」の五字決まりです。同じ「よのなか」で始まる札に、93番「世の中は」(決まり字「よのなかは」)があります。5文字目の「よ」で区別しましょう。
覚え方
世の中よ、くそ(山の奥でも 世の中よ)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る」に続く下の句は?
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山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
問2 この歌の決まり字は?
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よのなかよ(五字決まり)
問3 この歌の作者は?
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皇太后宮大夫俊成
問4 「鹿ぞ鳴くなる」の「なる」の文法的意味と活用形を答え、連体形になっている理由を説明しなさい。
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推定の助動詞「なり」の連体形で、鹿の声を聞いて「鳴いているようだ」と推し量る意味です。上に係助詞「ぞ」があるので、係り結びによって連体形になっています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:82番 思ひわび さても命は あるものを
- 次の歌:84番 長らへば またこのごろや しのばれむ
- 同じ色札の20首:桃札(ピンク札)の一覧と練習
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 千載和歌集 巻第十七 雑中(歌番号付き古典本文)
- 全日本かるた協会「一日一首」世の中よ道こそなけれ
- 千人万首(やまとうた)藤原俊成
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」83番
- マナペディア 百人一首83 現代語訳と解説(品詞分解)
- 百人一首で始める古文書講座(83)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)83番
- コトバンク「藤原俊成」(デジタル大辞泉ほか)
- コトバンク「西行」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。