長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首84番・藤原清輔)

百人一首84番は、藤原清輔の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第84首の歌

和歌 長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
ひらがな ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
読み方 ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ いまわこいしき
歌番号 84
歌集 新古今集
部立 雑下・1843番
作者・歌人 藤原清輔
色札 桃札(ピンク札)

意味・現代語訳

昔、つらくてたまらなかった日々が、いまはかえって恋しい。そうであるなら、この先も命があれば、苦しさの中にいる今のこの時期も、同じように慕わしく思い返される日が、いつか来るだろうか。

ひとことで言うと、つらかった昔が今は恋しいのだから、今のつらさもいつか懐かしくなるかと思う歌。

語句の意味

語句 意味
ながらふ この先も命がつづき、年を重ねていくこと。この歌では「もし〜ならば」という仮定の形で使われている。
このごろ 今の時期。作者がつらいと感じている、今この時を指す。
しのぶ 過ぎたことをなつかしく思い出すこと。「偲ぶ」と書く。
憂し つらい、いやだ、と思うさま。思いどおりにならず心が重いこと。
世 ここでは、以前に過ごした時期、そのころの境遇のこと。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
長らへ 動詞(ハ行下二段活用「長らふ」・未然形) 生き続ける
ば 接続助詞 未然形に付いて仮定条件(もし〜ならば)
また 副詞 再び・同じように
このごろ 名詞 今この時期
や 係助詞 疑問。結びは連体形
しのば 動詞(バ行四段活用「しのぶ」・未然形) なつかしく思い出す
れ 助動詞「る」(未然形・自発) 自然と〜される
む 助動詞「む」(連体形・推量) 〜だろう。「や」の結び。ここで文が切れる
憂し 形容詞(ク活用「憂し」・終止形) つらい
と 格助詞 引用(〜と)
見 動詞(マ行上一段活用「見る」・連用形) 思う・感じる
し 助動詞「き」(連体形・過去) 〜た。下の「世」にかかる
世 名詞 過ごしてきた時期
ぞ 係助詞 強意。結びは連体形
今 名詞
は 係助詞 取り立て(〜は)
恋しき 形容詞(シク活用「恋し」・連体形) 「ぞ」の結び

文法のポイント

  • 「長らへば」は未然形に「ば」が付いた形で、「もし生き続けるならば」という仮定条件を表します。已然形に付く「ば」(〜ので・〜と)との違いを押さえましょう。
  • 「しのばれむ」の「れ」は自発の助動詞「る」の未然形です。「しのぶ」「思ふ」など心の動きを表す動詞に付く「る・らる」は、自発(自然と〜される)になることが多いです。
  • 係り結びが二つあります。「や〜む」は疑問の「や」を受けて連体形「む」で結び、「ぞ〜恋しき」は「ぞ」を受けて連体形「恋しき」で結んでいます。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ しのばれむ 三句切れ。「や〜む」の係り結びで文が切れ、下の句でそう考える理由を述べています。

作者:藤原清輔

藤原清輔(ふじわらのきよすけ)。百人一首での作者名は「藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)」です。

1104年〜1177年。平安時代後期の歌人・歌学者です。79番の作者・藤原顕輔の子で、六条藤家の歌学を受けつぎました。父とは仲が悪かったと伝えられ、長い間低い位にとどまりましたが、学識の深さで次第に重んじられ、歌学書『袋草紙』『奥義抄』などを著しました。二条天皇の命で歌集をまとめましたが、天皇が亡くなったことで勅撰集にはならず、『続詞花和歌集』という名の私撰集になりました。藤原俊成と並ぶ歌壇の中心人物でした。

歌の背景と鑑賞

新古今集では「題しらず」とされていますが、作者の家集『清輔朝臣集』には、昔をしのぶ思いが強かったころ、まだ中将であった「三条内大臣」へ贈った歌だという詞書があります。この人物を誰とみるかについては説が分かれ、よまれた時期ははっきりしません。作者の清輔は父の顕輔と不仲だったと伝えられ、若いころは思うようにいかない日々を送りました。そうした経験と重ね合わせて読まれることの多い歌です。鑑賞では、昔・今・これから先という三つの時を行き来しながら、つらい今もいつかはなつかしくなるだろうと、自分をなぐさめるように考えている点に注目しましょう。上の句で問いかけ、下の句でその根拠を示す組み立てになっています。

出典:新古今集(雑下・1843番)。詞書:題しらず

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよそ いまはこひしき

決まり字は「ながら」の三字決まりです。同じ「なが」で始まる札に、80番「長からむ」(決まり字「ながか」)があります。3文字目の「ら」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

ながら牛(「なげきイカ」「なげけ過去」もあるよ)

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「長らへば またこのごろや しのばれむ」に続く下の句は?

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憂しと見し世ぞ 今は恋しき

問2 この歌の決まり字は?

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ながら(三字決まり)

問3 この歌の作者は?

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藤原清輔(百人一首での作者名は「藤原清輔朝臣」)

問4 「しのばれむ」の「れ」の意味と活用形を答え、そう判断できる理由を説明しなさい。

答えを見る

自発の助動詞「る」の未然形です。「しのぶ(なつかしく思い出す)」という心の動きを表す動詞に付いているので、「自然と思い出される」という自発の意味になります。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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