長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首80番・待賢門院堀河)

百人一首80番は、待賢門院堀河の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第80首の歌

和歌 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
ひらがな ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
読み方 ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさわ ものをこそおもえ
歌番号 80
歌集 千載集
部立 恋三・802番
作者・歌人 待賢門院堀河
色札 桃札(ピンク札)

意味・現代語訳

寝乱れてもつれた黒髪と同じように、(あなたが帰っていった)今朝、私の胸の内は乱れ、あれこれと思い悩むばかりだ。あなたの思いがこの先も長く続くのかどうか、私には見当もつかない。

ひとことで言うと、一夜を過ごした翌朝、相手の心を信じきれず、乱れた黒髪のように心が乱れる女性の歌。

語句の意味

語句 意味
長からむ心 いつまでも続くと相手の男性が誓った愛情。それが本当なのかどうかが、この歌の不安の種になっている。
知らず ここでは、見当がつかない、見きわめられないということ。
黒髪の 「黒髪のように」の意味。寝起きの髪のもつれに、心の乱れを重ねている。
今朝 共に一夜を過ごした翌朝のこと。このような別れの朝を「後朝(きぬぎぬ)」という。
物を思ふ あれこれと思い悩むこと。恋の悩みについて使うことが多い。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
長から 形容詞(ク活用「長し」・未然形)
む 助動詞「む」(連体形・婉曲) 〜ような。下の「心」にかかる
心 名詞 相手の男性の愛情
も 係助詞 〜も
知ら 動詞(ラ行四段活用「知る」・未然形) わかる
ず 助動詞「ず」(終止形・打消) ここで文が切れる(二句切れ)
黒髪 名詞
の 格助詞 連用修飾格(比喩・〜のように)
乱れ 動詞(ラ行下二段活用「乱る」・連用形) 髪が乱れる/心が乱れる
て 接続助詞 〜て
今朝 名詞 一夜を過ごした翌朝
は 係助詞 取り立て(〜は)
物 名詞
を 格助詞 対象(〜を)
こそ 係助詞 強意。結びは已然形
思へ 動詞(ハ行四段活用「思ふ」・已然形) 「こそ」の結び

文法のポイント

  • 「長からむ」の「む」は、下に名詞「心」が続く連体形なので、婉曲(〜ような)と考えます。文中で名詞の前にある「む」は、婉曲や仮定になることが多いと覚えておきましょう。
  • 「こそ〜思へ」は係り結びです。係助詞「こそ」を受けて、文末の「思ふ」が已然形「思へ」になっています。「ぞ・なむ・や・か」は連体形、「こそ」は已然形で結びます。
  • 「黒髪の」の「の」は「〜のように」と訳す比喩の用法です。「黒髪のように(心が)乱れて」と訳し、髪の乱れを心の乱れにたとえています。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ 心も知らず 二句切れ。「ず」を終止形とみれば、「心も知らず」で文が切れます。
縁語 「長から」「乱れ」と「黒髪」 「長し」「乱る」はどちらも髪のようすを表す言葉で、「黒髪」の縁語です。相手の心の長さや自分の心の乱れを、髪のイメージに重ねています。

作者:待賢門院堀河

待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)。

生没年未詳。平安時代後期の女性歌人です。神祇伯(神祇官の長官)をつとめた源顕仲の娘です。はじめ白河天皇の皇女・令子内親王に仕えて「六条」と呼ばれ、のちに鳥羽天皇の中宮で崇徳天皇の母にあたる待賢門院(藤原璋子)に仕えてからは「堀河」の名で呼ばれました。1142年に待賢門院が出家したとき、それに従って出家しています。崇徳院が企画した『久安百首』の作者の一人で、中古六歌仙にも数えられます。家集に『待賢門院堀河集』があります。

歌の背景と鑑賞

この歌は、崇徳院が歌人たちに詠ませた『久安百首』(1150年ごろ完成)の一首で、79番の藤原顕輔の歌と同じ百首歌の中にあります。恋の題でよまれた題詠で、一夜を共にして帰っていった男性へ送る歌という趣向でよまれています。平安時代の貴族の恋では、男性が夜に女性の家を訪ね、翌朝別れたあとに歌をやりとりする習わしがありました。この別れの朝を「後朝(きぬぎぬ)」といいます。鑑賞では、寝起きの黒髪の乱れが、そのまま心の乱れと重なっている点に注目しましょう。目に見える髪のようすを通して、相手を心から信じることのできない不安が表されています。「長から」「乱れ」は黒髪と縁のある言葉で、一首全体が髪のイメージでまとまっています。

出典:千載集(恋三・802番)。詞書:百首歌(久安百首)を献上したときに、恋の心をよんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
ながからん こころもしらず くろかみの みたれてけさは ものをこそおもへ

決まり字は「ながか」の三字決まりです。同じ「なが」で始まる札に、84番「長らへば」(決まり字「ながら」)があります。3文字目の「か」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

長髪 乱れて

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「長からむ 心も知らず 黒髪の」に続く下の句は?

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乱れて今朝は 物をこそ思へ

問2 この歌の決まり字は?

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ながか(三字決まり)

問3 この歌の作者は?

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待賢門院堀河

問4 「長からむ心」の「む」の意味と活用形を答え、そう判断できる理由を説明しなさい。

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婉曲の助動詞「む」の連体形です。すぐ後ろに名詞「心」が続いているので連体形とわかります。文中で名詞の前にある「む」は、婉曲(〜ような)と考えます。

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参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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