夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首85番・俊恵法師)

百人一首85番は、俊恵法師の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第85首の歌

和歌 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
ひらがな よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
読み方 よもすがら ものおもうころわ あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり
歌番号 85
歌集 千載集
部立 恋二・766番
作者・歌人 俊恵法師
色札 黄札

意味・現代語訳

冷たいあの人ばかりか、寝所の戸のすき間でさえ、私には薄情に感じられる。あの人を思い続けて眠れない夜を重ねるこのごろは、どれだけ待っても夜明けが来ず、そのすき間から朝の光がちっとも差しこんでこないのだから。

ひとことで言うと、恋人を待って眠れない夜、朝の光を通さない戸のすき間まで冷たく感じる歌。

語句の意味

語句 意味
夜もすがら 夜の初めから明け方までずっと続くようす。一晩中。
物思ふ 思い悩むこと。恋の悩みで心が晴れないことをいう場合が多い。
明けやらで 夜がすっかり明けきらないで。「やる」は打消の語と組んで「最後まで〜しきらない」意味を表す。
閨(ねや) 寝室。ここでは、恋人を待ちながら一人で夜を過ごしている部屋。
ひま すき間。ここでは寝室の戸などのすき間で、朝になると光が差しこむ所。
つれなし 冷たく、こちらの思いにこたえてくれないさま。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
夜もすがら 副詞 一晩中
物思ふ 動詞(ハ行四段活用「物思ふ」・連体形) 思い悩む。下の「ころ」にかかる
ころ 名詞 このごろ。幾晩も続く時期
は 係助詞 取り立て(〜は)
明け 動詞(カ行下二段活用「明く」・連用形) 夜が明ける
やら 動詞(ラ行四段活用「やる」・未然形) 補助動詞。打消を伴って「すっかり〜しきらない」
で 接続助詞 打消の接続(〜ないで)
閨 名詞 寝室
の 格助詞 連体修飾格(〜の)
ひま 名詞 すき間
さへ 副助詞 添加(〜までも)
つれなかり 形容詞(ク活用「つれなし」・連用形) 冷淡だ。薄情だ
けり 助動詞「けり」(終止形・詠嘆) 〜ことだなあ

文法のポイント

  • 「明けやらで」の「で」は、未然形に付いて「〜ないで」と打消の意味で下へつなぐ接続助詞です。「やら」は補助動詞「やる」の未然形で、全体では「夜がすっかりは明けずに」の意味です。
  • 「閨のひまさへ」の「さへ」は添加の副助詞で、「〜までも」と訳します。冷たい恋人に加えて、閨のすき間まで、という気持ちが込められています。
  • 「つれなかりけり」は、ク活用の形容詞「つれなし」の連用形「つれなかり」に、詠嘆の「けり」が付いた形です。「けり」は連用形に付く助動詞です。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。一晩中思い悩むようすから、寝室のすき間まで、ひと続きでよまれています。

作者:俊恵法師

俊恵法師(しゅんえほうし)。一般には「俊恵(しゅんえ)」とも呼ばれます。

1113年〜没年未詳。平安時代末期の僧・歌人です。源俊頼の子で、祖父は源経信です。71番の経信、74番の俊頼とあわせ、親子三代そろって百人一首に名を連ねています。17歳ごろに父を亡くし、東大寺の僧になりました。のちに、住まいとした京都・白川の坊に「歌林苑」という名を付け、貴族・神官・僧・女房など立場の違う多くの歌人を集めて、歌会や歌合を開きました。『方丈記』を書いた鴨長明は俊恵に和歌を学んでいます。家集は『林葉和歌集』です。

歌の背景と鑑賞

千載集の詞書によると、「恋の歌」としてよまれた歌です。作者は僧ですが、訪れない恋人を待ちながら眠れずに夜を過ごす女性の立場に立ってよんでいると説明されています。冷たい恋人に加えて、朝の光をなかなか入れてくれない戸のすき間まで恨めしく思える、という発想がこの歌の工夫です。ふだんは気にもとめない小さなすき間に目を向けたところに、長い夜のつらさが表れています。なお、千載集や古い写本では第三句が「明けやらぬ」となっていて、今のかるたに見られる「明けやらで」の形は、江戸時代の初めごろから広まったとされています。

出典:千載集(恋二・766番)。詞書:恋の歌としてよんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり

決まり字は「よも」の二字決まりです。同じ「よ」で始まる札に、62番「夜をこめて」(決まり字「よを」)、83番「世の中よ」(決まり字「よのなかよ」)、93番「世の中は」(決まり字「よのなかは」)があります。2文字目の「も」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

用もねえや

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで」に続く下の句は?

答えを見る

閨のひまさへ つれなかりけり

問2 この歌の決まり字は?

答えを見る

よも(二字決まり)

問3 この歌の作者は?

答えを見る

俊恵法師

問4 「閨のひまさへ」の「さへ」の意味を答え、何に何を付け加えているのかを説明しなさい。

答えを見る

添加の副助詞で、「〜までも」という意味です。冷たい恋人に加えて、朝の光を通してくれない寝室のすき間までもがつれなく感じられる、という気持ちを表しています。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

  • URLをコピーしました!
目次