百人一首7番は、阿倍仲麻呂の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第7首の歌
| 和歌 | 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも |
|---|---|
| ひらがな | あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも |
| 読み方 | あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも |
| 歌番号 | 7 |
| 歌集 | 古今集 |
| 部立 | 羇旅・406番 |
| 作者・歌人 | 安倍仲麿 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
大空をはるかに仰ぎ見ると、月が出ている。(あの月は、ふるさとの)春日にある三笠の山に(昔)出ていた月と(同じ月な)のだなあ。
ひとことで言うと、唐の地で見上げた月に、ふるさと奈良の三笠山の月を重ねた望郷の歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 天の原 | 広々とした大空。空を広い野原のようにとらえて言うことば。 |
| ふりさけ見る | 顔を上げて、遠くの空を見わたす。 |
| 春日 | 今の奈良市、春日大社のあたりの地名。平城京の東にあたる。 |
| 三笠の山 | 春日大社の後ろにある山(三笠山・御蓋山)。笠を伏せたような形をしている。 |
| かも | 詠嘆を表す終助詞。古い時代の歌に多く、「〜だなあ」と訳す。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 天の原 | 名詞 | 広々とした大空 |
| ふりさけ見れ | 動詞(マ行上一段活用「ふりさけ見る」・已然形) | 振り仰いで遠くを見る。複合動詞として扱う |
| ば | 接続助詞 | 已然形に付いて確定条件「〜すると」 |
| 春日 | 名詞 | 地名 |
| なる | 助動詞「なり」(連体形・存在) | 断定の助動詞の存在の用法。「〜にある」 |
| 三笠 | 名詞 | 山の名 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格 |
| 山 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | 場所「〜に」 |
| 出で | 動詞(ダ行下二段活用「出づ」・連用形) | 出る |
| し | 助動詞「き」(連体形・過去) | 自分が体験した過去。下の体言「月」に続くので連体形 |
| 月 | 名詞 | |
| かも | 終助詞 | 詠嘆「〜だなあ」 |
文法のポイント
- 「ふりさけ見れば」は已然形+「ば」の確定条件で、「〜すると」と訳します。未然形+「ば」なら「もし〜ならば」という仮定条件になるので区別します。
- 「春日なる」の「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形です。場所を表す語に付いて「〜にある」という存在の意味を表します。
- 「出でし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。「き」は自分が実際に体験した過去を表し、昔ふるさとで見た月を思い出していることを示します。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。五句全体がひと続きで、最後を「月かも」と詠嘆で結びます。 |
| 歌枕 | 三笠の山 | 奈良の春日にある三笠山は、和歌によまれてきた名所(歌枕)です。ここでは遠いふるさと奈良を思い起こさせる場所として使われています。 |
作者:阿倍仲麻呂
阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)。百人一首での作者名は「安倍仲麿(あべのなかまろ)」です。
奈良時代の人です。698年に生まれ、770年に唐で亡くなりました(生まれ年を701年とする説もある)。717年、遣唐使とともに留学生として唐にわたりました。唐では朝衡(晁衡)と名乗り、玄宗皇帝に仕えて秘書監などの高い官職にのぼりました。科挙に合格したと伝えられるが、これを疑う見方もあります。李白や王維ら唐の詩人とも親しく交わりました。753年、遣唐大使の藤原清河らと帰国の船に乗ったが、嵐にあって安南(今のベトナム)に流れ着き、長安にもどりました。その後は日本に帰ることなく、唐で一生を終えました。
歌の背景と鑑賞
『古今和歌集』羇旅歌に入る歌で、詞書は「唐土にて月を見てよみける」です。歌の後に付いた左注によれば、長く唐にとどまっていた仲麻呂が、日本から来た遣唐使とともに帰国しようとしたとき、明州の海辺で唐の人々が送別の宴を開き、夜に美しく昇った月を見てよんだと語り伝えられています。異国で見上げている月に、若いころ奈良の春日で見た三笠山の月を重ね、ふるさとへの思いを表しています。ただし左注の話はあくまで伝承で、実際の出発地を蘇州とみて明州を疑う指摘や、別れの席でよんだとは限らないとする説もあります。なお、紀貫之の『土佐日記』では、初句を「青海原」としてこの歌が引かれています。
出典:古今集(羇旅・406番)。詞書:唐(もろこし)で月を見てよんだ歌。歌の後の左注に、帰国のとき明州の海辺で唐の人々が送別の宴を開き、夜に美しく昇った月を見てよんだと語り伝える。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| あまのはら ふりさけみれば かすがなる | みかさのやまに いてしつきかも |
決まり字は「あまの」の三字決まりです。同じ「あま」で始まる札に、12番「天つ風」(決まり字「あまつ」)があります。3文字目の「の」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
三笠の山は 天の原にある(本当は奈良にある)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「天の原 ふりさけ見れば 春日なる」に続く下の句は?
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三笠の山に 出でし月かも
問2 この歌の決まり字は?
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あまの(三字決まり)
問3 この歌の作者は?
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阿倍仲麻呂(百人一首での作者名は「安倍仲麿」)
問4 「出でし月かも」の「し」について、品詞と活用形を答えなさい。また、なぜその活用形になっているのか説明しなさい。
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過去の助動詞「き」の連体形です。すぐ下の「月」という体言に続くため連体形になっています。昔ふるさとで見た月を思い出す気持ちを表しています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:6番 かささぎの 渡せる橋に おく霜の
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- 同じ色札の20首:黄札(黄色)の一覧と練習
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 古今和歌集 卷第九 羈旅歌(本文・詞書・左注)
- 小倉山荘 ちょっと差がつく百人一首講座(7番)
- 千人万首 阿倍仲麻呂(安倍仲麿)
- コトバンク「阿倍仲麻呂」
- コトバンク「振り放け見る」
- コトバンク「天の原」
- コトバンク「三笠山」
- マナペディア 百人一首7
- 二階の窓から 百人一首007
- ベネッセ教育情報 百人一首007
- 百人一首で始める古文書講座(7)
- 短歌のこと 天の原ふりさけ見れば
- Wikipedia「阿倍仲麻呂」
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。