わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首20番・元良親王)

百人一首20番は、元良親王の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第20首の歌

和歌 わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
ひらがな わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
読み方 わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう
歌番号 20
歌集 後撰集
部立 恋五・960番
作者・歌人 元良親王
色札 緑札

意味・現代語訳

(二人の仲が知れわたり)ここまで苦しみ悩んだ今となれば、この先に何が起ころうと変わりはしない。難波の澪標(みおつくし)と同じ音の「身を尽くし」のとおり、わが身が破滅しても、ぜひとも逢いに行くつもりだ。

ひとことで言うと、恋が世に知れたあと、身を滅ぼしても相手に逢おうという激しい決意をよんだ歌。

語句の意味

語句 意味
わぶ 思いどおりにならず、つらさに打ちのめされること。ここでは恋の悩みで追いつめられた気持ち。
はた 副詞で、「やはり」「また」に近い意味。「今はた同じ」で、今さら何をしても結果は変わらないという、開き直った思いを表す。
難波(なには) 今の大阪市のあたり。入り江や浅瀬が多く、澪標の立つ海辺として歌によまれた土地。
澪標(みをつくし) 浅い海で、船の通り道となる深い筋(澪)の目じるしとして打ち込んだ杭。「みをつくし」の音が「身を尽くし」と一致する。
身を尽くす 自分のすべてを投げうつこと。ここでは、たとえ破滅することになってもかまわないという覚悟を表す。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
わび 動詞(バ行上二段活用「わぶ」・連用形) 思い悩む。つらく思う
ぬれ 助動詞「ぬ」(已然形・完了) 〜てしまった
ば 接続助詞 已然形に付いて確定条件。ここでは原因・理由(〜ので)
今 名詞
はた 副詞 やはり。結局は
同じ 形容詞(シク活用・終止形) ここで意味がいったん切れる(二句切れ)
難波 名詞 地名。「なには」と読む
なる 助動詞「なり」(連体形・存在) 〜にある
み 名詞 身。「みをつくし」全体が「澪標」との掛詞
を 格助詞 動作の対象(〜を)
つくし 動詞(サ行四段活用「尽くす」・連用形) 使い果たす。「身を尽くし」で身を滅ぼす
て 接続助詞
も 係助詞 「〜ても」の形で意味を強める
逢は 動詞(ハ行四段活用「逢ふ」・未然形)
む 助動詞「む」(終止形・意志) 〜しよう
と 格助詞 引用(〜と)
ぞ 係助詞 強意。結びは連体形
思ふ 動詞(ハ行四段活用「思ふ」・連体形) 「ぞ」の結び

文法のポイント

  • 「わびぬれば」は、動詞「わぶ」の連用形に完了の助動詞「ぬ」の已然形「ぬれ」と接続助詞「ば」が付いた形です。「已然形+ば」は確定条件で、ここでは「思い悩んでしまったので」と原因・理由を表します。
  • 「逢はむとぞ思ふ」の「む」は意志の助動詞で、「逢おう」という決意を表します。強意の係助詞「ぞ」を受けて、文末の「思ふ」は連体形で結ばれています。形は終止形と同じなので注意しましょう。
  • 「難波なる」の「なる」は、場所を表す語に付いて「〜にある」という意味になる存在の助動詞「なり」の連体形です。断定の「なり」と区別して覚えましょう。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 二句切れ。「今はた同じ」で意味がいったん切れ、後半で決意が述べられます。
掛詞 みをつくし 船の目印の「澪標(みをつくし)」と、身を滅ぼす意の「身を尽くし」を掛けています。難波の海の景物と作者の覚悟が一つの言葉に重なっています。

作者:元良親王

元良親王(もとよししんのう)。

890年〜943年。父は陽成天皇で、その第一皇子にあたりますが、生まれたのは父の退位から数年後でした。位は三品、官職は兵部卿です。恋の多い人で、『大和物語』や『今昔物語集』には、女性たちと歌を交わした話がいくつも収められています。宇多法皇に深く愛されていた京極御息所(藤原褒子)との関係は、とくに広く知られることになりました。『後撰集』以下の勅撰集に20首が入り、家集に『元良親王集』があります。

歌の背景と鑑賞

『後撰集』の詞書によると、この歌は、京極御息所との秘めた恋が表ざたになったのちに、御息所へ贈られたものです。京極御息所は藤原時平の娘の褒子で、宇多法皇の寵愛を受けていた女性でした。前半の「今はた同じ」には、噂が広まった以上、逢おうが逢うまいがもはや苦しさは同じだという思いが込められていると解釈されています。後半では、難波の海に立つ澪標を持ち出して「身を尽くし」の意味を重ね、破滅を覚悟してでも逢いたいと言い切っています。二句切れで前後がはっきり分かれ、「ぞ」の係り結びが決意の強さを支えています。なお、この歌は『拾遺集』の恋二にも「題しらず」として重ねて収められています。

出典:後撰集(恋五・960番)。詞書:京極御息所との仲が表ざたになったのちに、御息所に贈った歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あはむとそおもふ

決まり字は「わび」の二字決まりです。「わ」で始まる札はほかに6枚あり、2文字目の「び」で決まります。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

身を尽くしてわびる(一生懸命あやまろう)

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「わびぬれば 今はた同じ 難波なる」に続く下の句は?

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みをつくしても 逢はむとぞ思ふ

問2 この歌の決まり字は?

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わび(二字決まり)

問3 この歌の作者は?

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元良親王

問4 「わびぬれば」の「ぬれ」の文法的説明をし、「ぬれば」全体がどのような意味を表すか答えなさい。

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「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形です。已然形に接続助詞「ば」が付いているので確定条件となり、「(思い悩んで)しまったので」と原因・理由を表します。

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参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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