百人一首48番は、源重之の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第48首の歌
| 和歌 | 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな |
|---|---|
| ひらがな | かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな |
| 読み方 | かぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ くだけてものを おもうころかな |
| 歌番号 | 48 |
| 歌集 | 詞花集 |
| 部立 | 恋上・211番 |
| 作者・歌人 | 源重之 |
| 色札 | 桃札(ピンク札) |
意味・現代語訳
風がとても強いので、波は岩へ打ちかかっては、自分の身ばかりを粉々に散らしてしまう。私の恋もそれと同じだ。こちらの心ばかりがばらばらに砕けて、思い悩む日々が続いていることよ。
ひとことで言うと、岩に当たって散る波に、つれない相手を思って悩む自分の姿を重ねた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| いたみ | 「いたし(程度がひどい)」の語幹に理由を表す「み」が付いた形。「風をいたみ」で「風がひどく強いので」となる。 |
| 岩うつ波 | 岩に打ちつける波。動かない岩をつれない相手に、砕ける波を作者自身にたとえている。 |
| おのれ | 自分自身。波が自分だけ砕けることと、作者が一人で悩むことの両方を指す。 |
| くだけて物を思ふ | 心がばらばらになるほど思い悩むこと。恋の苦しさを表す言い方として使われた。 |
| ころ | このところ。ある時期のあいだ、同じ状態が続いていることを表す。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 風 | 名詞 | |
| を | 間投助詞 | 「〜を〜み」の形で「〜が」にあたる語を示す(格助詞とする説明もある) |
| いた | 形容詞(ク活用・語幹) | 基本形「いたし」。はなはだしい |
| み | 接尾語 | 原因・理由(〜ので) |
| 岩 | 名詞 | |
| うつ | 動詞(タ行四段活用「うつ」・連体形) | 下の「波」にかかる |
| 波 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格(〜が)。比喩(〜のように)と見る説明もある |
| おのれ | 代名詞 | 自分自身 |
| のみ | 副助詞 | 限定(〜だけ) |
| くだけ | 動詞(カ行下二段活用「くだく」・連用形) | 砕ける |
| て | 接続助詞 | |
| 物 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | 対象(〜を) |
| 思ふ | 動詞(ハ行四段活用「思ふ」・連体形) | 「物を思ふ」で思い悩む |
| ころ | 名詞 | |
| かな | 終助詞 | 詠嘆(〜だなあ) |
文法のポイント
- 「名詞+を+形容詞の語幹+み」は、「〜が〜なので」と原因・理由を表す形です。「風をいたみ」は「風が激しいので」と訳します。1番の「苫をあらみ」、77番の「瀬をはやみ」も同じ形です。
- 「おのれのみ」の「のみ」は限定の副助詞で、「〜だけ」と訳します。岩は平気なのに波だけが砕けるという対比を、この「のみ」がはっきりさせています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。風と波の情景から作者の嘆きまで、一続きの文になっています。 |
| 序詞 | 風をいたみ岩うつ波の | 「おのれのみくだけて」を導く序詞です。岩に当たって砕ける波の姿が、つれない相手の前で一人思い悩む作者の姿のたとえになっています。 |
作者:源重之
源重之(みなもとのしげゆき)。
生年不詳〜1000年ごろ。三十六歌仙の一人で、国司として各地へ赴いた経験から、旅先の風景を詠みこんだ作が目立ちます。清和天皇の皇子貞元親王の孫にあたり、実の父源兼信が陸奥国に移り住んだため、伯父源兼忠に引き取られて都で育ちました。冷泉天皇がまだ皇太子のころには、身辺を守る帯刀(たちはき)の長として仕え、このとき差し出した百首の歌は、百首歌という形の最も早い例の一つに数えられます。のちに相模・肥後・筑前などの国司を務め、最後は、陸奥守として赴任する藤原実方(51番)に同行して東北へ下り、そこで亡くなりました。家集に『重之集』があります。
歌の背景と鑑賞
詞花集の詞書によると、冷泉天皇がまだ皇太子だったころに献上した百首歌の中の一首で、家集『重之集』の百首歌では恋の歌に入っています。上の二句が序詞で、強い風に押された波が岩に打ち寄せても、岩の方は少しも動かず、波ばかりが砕けては散っていく様子を描きます。その波の姿に、相手のつれなさを前にしてなすすべもなく思い乱れる、作者自身が映し出されています。古い注釈書でも、岩をつれない女性に、波を作者自身になぞらえた歌と説明されています。「くだけて物を思ふ」という言い方は当時の恋歌に見られる表現ですが、荒れた海の激しい情景と結びつけることで、恋の苦しさがくっきりと目に浮かぶ歌になっています。
出典:詞花集(恋上・211番)。詞書:冷泉院がまだ皇太子だったころ、百首歌を献上したときによんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| かぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ | くたけてものを おもふころかな |
決まり字は「かぜを」の三字決まりです。同じ「かぜ」で始まる札に、98番「風そよぐ」(決まり字「かぜそ」)があります。3文字目の「を」で区別しましょう。
覚え方
風をくだけ
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ」に続く下の句は?
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くだけて物を 思ふころかな
問2 この歌の決まり字は?
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かぜを(三字決まり)
問3 この歌の作者は?
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源重之
問4 「風をいたみ」を現代語に訳し、「いた」と「み」の文法的な説明を答えなさい。
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訳は「風が激しいので」です。「いた」はク活用の形容詞「いたし」の語幹、「み」は原因・理由を表す接尾語で、「名詞+を+形容詞の語幹+み」の形になっています。
前後の歌・関連ページ
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- 同じ色札の20首:桃札(ピンク札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「詞花集」
- 詞花和歌集 巻第七 恋上(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」48番
- 百人一首で始める古文書講座(48)
- マナペディア 百人一首48 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首048 品詞分解と解説
- 百人一首48番(programming-cafe)
- 千人万首 源重之
- コトバンク「源重之」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。