百人一首66番は、前大僧正行尊の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第66首の歌
| 和歌 | もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし |
|---|---|
| ひらがな | もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし |
| 読み方 | もろともに あわれとおもえ やまざくら はなよりほかに しるひともなし |
| 歌番号 | 66 |
| 歌集 | 金葉集 |
| 部立 | 雑上・521番 |
| 作者・歌人 | 前大僧正行尊 |
| 色札 | 桃札(ピンク札) |
意味・現代語訳
山桜よ。人の気配もない深い山中で、私の思いを汲んでくれる相手といえば、咲いているおまえの花しかいない。だから、おまえのほうからも私と心を合わせ、この身を心からいとしんでほしい。
ひとことで言うと、人けのない修行の山中で、咲いていた山桜に友のように語りかけ、孤独な胸の内を明かした歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| もろともに | いっしょに、そろって。ここでは、こちらが山桜に心を寄せるのと同じように、山桜の側からも、という思いをこめる。 |
| あはれ | しみじみと心が動くこと。ここでは、いとしい、なつかしいと感じる気持ち。 |
| 山桜(やまざくら) | 山に自生する桜。ここでは呼びかける相手で、人のように語りかけている。 |
| 知る人 | 顔見知りという意味ではなく、胸の内をくみ取り、心を通わせてくれる相手。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| もろともに | 副詞 | いっしょに |
| あはれ | 名詞 | しみじみとした思い |
| と | 格助詞 | 引用(〜と) |
| 思へ | 動詞(ハ行四段活用・命令形) | 基本形「思ふ」 |
| 山桜 | 名詞 | 呼びかけ(〜よ) |
| 花 | 名詞 | |
| より | 格助詞 | 限定。下の「ほか」と組んで「〜以外に」 |
| ほか | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 知る | 動詞(ラ行四段活用・連体形) | 理解する |
| 人 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | 強意(〜も) |
| なし | 形容詞(ク活用・終止形) |
文法のポイント
- 「思へ」は四段活用「思ふ」の命令形です。四段活用では命令形と已然形が同じ形(思へ)になるので、下に続く語や文の意味から見分けます。ここは山桜への呼びかけの中なので命令形です。
- 「花よりほかに」の「より」は、下の「ほか」と組んで「〜以外に」という限定の意味を表す格助詞です。「花よりほかに知る人もなし」で「花以外に、わかってくれる人もいない」となります。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 三句切れ。「あはれと思へ山桜」で呼びかけがいったん言い切られ、下の句でその理由を述べています。 |
| 擬人法 | 山桜 | 花に向かって、心の通う友に語るような口ぶりで思いを打ち明けています。人ではない山桜に、人と同じ心を認めているところが擬人法です。 |
作者:前大僧正行尊
前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)。一般には「行尊(ぎょうそん)」とも呼ばれます。
1055年〜1135年。生年を1057年とする資料もあります。参議源基平の子で、小一条院(敦明親王)の孫にあたります。12歳で園城寺(三井寺)に入って僧となり、17歳のころからは大峰・熊野といった修験の山々に分け入って、苦しい行を重ねました。その祈祷の力が評判となって朝廷に重んじられ、園城寺長吏、天台座主(すぐに辞任)を経て大僧正となり、平等院大僧正とも呼ばれました。歌人としても名高く、『金葉集』をはじめとする勅撰集に数多くの歌が入っています。
歌の背景と鑑賞
『金葉集』の詞書によると、修験道の霊場として知られる大峰山で、思いがけず桜が咲いているのを見てよんだ歌です。行尊は若いころから大峰などの険しい山々で修行を重ねた僧でした。人影もない山奥で、作者はふと山桜に目をとめます。その花に、私と同じ心でいてくれと呼びかけ、ここで自分の心中を察してくれるのは花だけだと打ち明けています。この歌が春の部ではなく雑の部に入っているのは、季節の景物としての桜よりも、修行に打ちこむ僧の信仰の心を映した歌と受け止められたためと見る解説があります。また、詞書の「思ひがけず」を、季節外れの桜と見るか、山奥という意外な場所に咲く桜と見るかでも、説が分かれています。
出典:金葉集(雑上・521番)。詞書:大峰山で、思いもよらず桜の花が咲いているのを見てよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| もろともに あわれとおもえ やまざくら | はなよりほかに しるひともなし |
決まり字は「もろ」の二字決まりです。同じ「も」で始まる札に、100番「ももしきや」(決まり字「もも」)があります。2文字目の「ろ」で区別しましょう。
覚え方
花(はな)より もろこし
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「もろともに あはれと思へ 山桜」に続く下の句は?
答えを見る
花よりほかに 知る人もなし
問2 この歌の決まり字は?
答えを見る
もろ(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
答えを見る
前大僧正行尊
問4 この歌は何句切れか答えなさい。また、「山桜」はどのような働きをしているか説明しなさい。
答えを見る
三句切れです。「山桜」は呼びかけの言葉で、「もろともにあはれと思へ」と山桜に語りかけ、人のように扱っています(擬人法)。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:65番 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
- 次の歌:67番 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
- 同じ色札の20首:桃札(ピンク札)の一覧と練習
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「金葉集_二度本」「金葉集_三奏本」
- 金葉和歌集 巻第九 雑上(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」66番
- 百人一首で始める古文書講座(66)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首66 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首066 品詞分解と解説
- 百人一首 66番(programming-cafe)
- コトバンク「行尊」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・世界大百科事典・日本大百科全書・日本人名大辞典)
- コトバンク「大峰山」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・世界大百科事典)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。