百人一首62番は、清少納言の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第62首の歌
| 和歌 | 夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ |
|---|---|
| ひらがな | よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ |
| 読み方 | よをこめて とりのそらねわ はかるとも よにおうさかの せきわゆるさじ |
| 歌番号 | 62 |
| 歌集 | 後拾遺集 |
| 部立 | 雑二・939番 |
| 作者・歌人 | 清少納言 |
| 色札 | 青札 |
意味・現代語訳
まだ夜が深いうちに、鶏の鳴きまねをして(関守を)だまそうとしても、(函谷関ならともかく、この)逢坂の関は決して(通ることを)許しません。(あなたと逢うことも許しません。)
ひとことで言うと、鶏の鳴きまねの故事をふまえ、言い訳をする男性を機知でやりこめた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 夜をこめて | まだ夜が深く、明けきらないうちに。「こむ」は包みこむ・しまいこむの意味。 |
| 鳥のそらね | 鶏の鳴きまね。ここでは中国の函谷関の故事を指している。 |
| はかる | だます。うまく計略を使って、相手をあざむくこと。 |
| よに | 下に打消の語を伴って「決して(〜ない)」の意味を表す副詞。 |
| 逢坂の関 | 山城国と近江国の境の逢坂山にあった関所。和歌では「逢ふ」を連想させる歌枕。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 夜 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | 動作の対象 |
| こめ | 動詞(マ行下二段活用「こむ」・連用形) | 「夜をこむ」で、まだ夜が深い |
| て | 接続助詞 | 〜て |
| 鳥 | 名詞 | 鶏のこと |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| そらね | 名詞 | 鳴きまね |
| は | 係助詞 | 取り立て |
| はかる | 動詞(ラ行四段活用「はかる」・終止形) | だます |
| とも | 接続助詞 | 逆接の仮定条件(たとえ〜しても) |
| よに | 副詞 | 下の打消「じ」と呼応して「決して」 |
| 逢坂 | 名詞 | 地名。「逢ふ」との掛詞 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 関 | 名詞 | 関所 |
| は | 係助詞 | 取り立て |
| ゆるさ | 動詞(サ行四段活用「ゆるす」・未然形) | 通行を許す |
| じ | 助動詞「じ」(終止形・打消意志) | 〜ないつもりだ |
文法のポイント
- 「よに〜じ」は呼応の副詞の形です。「よに」は下に打消の語を伴うと「決して〜ない」という意味になります。「さらに」「つゆ」「ゆめ」なども同じ働きをします。
- 「はかるとも」の「とも」は逆接の仮定条件を表す接続助詞で、「たとえ〜しても」と訳します。動詞には終止形で接続するので、「はかる」は終止形です。
- 「じ」は未然形に接続する助動詞で、「む」を打ち消した意味(打消意志・打消推量)を表します。ここでは「決して許さないつもりだ」という強い気持ちを表しています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。「〜はかるとも」で下の句へ続き、最後まで一続きです。 |
| 掛詞 | 「逢坂」 | 関所の地名「逢坂」に、男女が「逢ふ」意味を重ねています。関を通さないことが、あなたとは逢わないという意味になります。 |
| 故事をふまえる | 「鳥のそらね」 | 中国の『史記』にある、孟嘗君が家来に鶏の鳴きまねをさせて函谷関を夜のうちに通り抜けた話をふまえています。 |
作者:清少納言
清少納言(せいしょうなごん)。
生没年未詳(966年ごろの生まれとする説が多い)。歌人清原元輔の娘で、曽祖父(祖父とする説もある)は清原深養父です。元輔と深養父も百人一首に歌が採られています。993年ごろから一条天皇の中宮定子に仕え、和歌や漢詩文の深い教養で知られました。随筆『枕草子』、家集『清少納言集』を残しています。晩年に落ちぶれてさまよったという話は後世の説話で、事実とは考えにくいとされます。
歌の背景と鑑賞
この歌のやりとりは『枕草子』の「頭の弁の、職に参りたまひて」の段にも書かれています。藤原行成は、夜に作者と話したあと急いで帰り、翌朝「鶏の声にせかされて」と、まるで恋人のような手紙をよこしました。作者は、中国の『史記』にある函谷関の話で切り返します。孟嘗君という人物が、家来に鶏の鳴きまねをさせて夜明け前に関所の門を開けさせ、逃げのびたという故事です。行成が「これは逢坂の関です」とかわしたので、作者は「逢坂の関は、鳴きまねでは決して開きません」と歌で返しました。『枕草子』によると、このあと行成も歌で応じています。漢籍の知識をすぐに使いこなした機知が見どころです。なお後拾遺集では、第二句が「鳥のそらねに」となっています。
出典:後拾遺集(雑二・939番)。詞書:藤原行成が作者と話していたが、宮中の物忌みを理由に急いで帰り、翌朝「鶏の声にせかされて」と言ってきた。作者が「夜更けの鶏の声とは函谷関の話ですか」と返すと、「これは逢坂の関です」と答えてきたので詠んだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| よをこめて とりのそらねは はかるとも | よにあふさかの せきはゆるさし |
決まり字は「よを」の二字決まりです。同じ「よ」で始まる札に、83番「世の中よ」(決まり字「よのなかよ」)、85番「夜もすがら」(決まり字「よも」)、93番「世の中は」(決まり字「よのなかは」)があります。2文字目の「を」で区別しましょう。
覚え方
容積(よをせき) そのまま「よをよに」でも
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも」に続く下の句は?
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よに逢坂の 関はゆるさじ
問2 この歌の決まり字は?
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よを(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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清少納言
問4 「よに逢坂の関はゆるさじ」の「よに」はどんな働きをする語か。意味とあわせて答えなさい。
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呼応の副詞です。下の打消の助動詞「じ」と呼応して「決して〜ない」という意味になり、「逢坂の関は決して通らせない」と強く打ち消しています。
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- 同じ色札の20首:青札の一覧と練習
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「後拾遺集」
- 千人万首(やまとうた)清少納言
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」62番
- 百人一首で始める古文書講座(62)
- マナペディア 百人一首62
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)62番
- コトバンク「世に」「空音」「夜を籠む」「逢坂の関」「函谷関」
- コトバンク「清少納言」(日本大百科全書・世界大百科事典ほか)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。