君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首50番・藤原義孝)

百人一首50番は、藤原義孝の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第50首の歌

和歌 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
ひらがな きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
読み方 きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな
歌番号 50
歌集 後拾遺集
部立 恋二・669番
作者・歌人 藤原義孝
色札 青札

意味・現代語訳

(逢う前は)あなたのためなら失っても惜しくなかった命さえ、(思いがかなった今は)いつまでも続いてほしいと願うようになったことだ。

ひとことで言うと、恋が実った翌朝、惜しくなかった命を長く生きたいと願うようになった心の変化の歌。

語句の意味

語句 意味
君がため あなたのため。ここでは「あなたに逢うためなら」という気持ちを表す。
惜し 失うのがもったいない、手放したくない。シク活用の形容詞。歌では未然形「惜しから」。
さへ 「〜までも」の意味で、あるものに別のものが加わることを表す副助詞。
もがな 「〜であればいいなあ」「〜であってほしい」という願望を表す終助詞。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
君 名詞 あなた(恋人)
が 格助詞 連体修飾格(〜の)
ため 名詞 〜のため
惜しから 形容詞(シク活用・未然形) 基本形「惜し」。助動詞「ず」に続くので補助活用(カリ活用)の未然形
ざり 助動詞「ず」(連用形・打消) 〜ない。助動詞「き」に接続する
し 助動詞「き」(連体形・過去) 〜た。下の「命」を修飾する
命 名詞
さへ 副助詞 添加(〜までも)
長く 形容詞(ク活用・連用形) 基本形「長し」。終助詞「もがな」は連用形に付く
もがな 終助詞 願望(〜であればなあ、〜であってほしい)
と 格助詞 引用(〜と)
思ひ 動詞(ハ行四段活用・連用形) 基本形「思ふ」。助動詞「けり」は連用形に接続する
ける 助動詞「けり」(連体形・詠嘆) 今はじめて気づいた気持ちを表す。終助詞「かな」に接続するので連体形
かな 終助詞 詠嘆(〜ことよ)

文法のポイント

  • 「長くもがな」の「もがな」は願望の終助詞で、「〜であってほしいなあ」と訳します。形容詞の連用形「長く」に付いて、「(命が)長くあってほしい」という意味になります。
  • 「惜しからざりし」は、形容詞「惜し」の未然形+打消「ず」の連用形「ざり」+過去「き」の連体形「し」です。助動詞に続くときは「惜しく」ではなく補助活用の「惜しから」を使います。
  • 「さへ」は添加の副助詞で「〜までも」と訳します。捨ててもよいと思っていた命までも、と、以前の気持ちからの変化を強めています。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。
対比 惜しからざりし命 / 長くもがな 逢う前は惜しくなかった命と、逢ったあとの長くあってほしい命とを対比し、恋がかなったあとの心の変化を表しています。

作者:藤原義孝

藤原義孝(ふじわらのよしたか)。

954年生まれ、974年没。平安時代中期の歌人で、摂政・藤原伊尹の子です(三男とも四男ともいわれます)。右近衛少将となり、正五位下に至りました。美男として名高く、仏道を深く信じた人として多くの説話に語られています。974年に天然痘(疱瘡)にかかり、朝に亡くなった兄の挙賢に続いて、同じ日の夕方に21歳で亡くなりました。書の名人として知られる藤原行成の父です。中古三十六歌仙の一人で、家集に『義孝集』があります。

歌の背景と鑑賞

『後拾遺和歌集』恋二に、「女性のもとから帰って贈った」という詞書とともに収められています。男性が女性のもとで一夜を過ごし、翌朝帰ってから贈る「後朝(きぬぎぬ)の歌」です。逢えるまでは、あなたのためなら命も惜しくないと思っていたのに、思いがかなった今は、長く生きてあなたと逢い続けたいと思う。その心の変化を素直によんでいます。なお、初句「君がため」は、すぐ後の「惜しからざりし」ではなく、下の句の「長くもがなと思ひける」にかかると見る説もあります(あなたのために長く生きたい、という読み方)。作者は21歳の若さで亡くなっており、そのことを知って読むと、長生きを願う言葉がいっそう切なく感じられます。

出典:後拾遺集(恋二・669番)。詞書:「女のもとより帰りてつかはしける」とあり、女性のもとから帰ったあとに贈った歌(後朝の歌)

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
きみがため おしからざりし いのちさえ なかくもかなと おもひけるかな

決まり字は「きみがためお」の六字決まりです。同じ「きみがため」で始まる札に、15番「君がため」(決まり字「きみがためは」)があります。6文字目の「お」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

ななちゃん ももちゃん 君がため(字札では「なな」「もも」が並んでいる)

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「君がため 惜しからざりし 命さへ」に続く下の句は?

答えを見る

長くもがなと 思ひけるかな

問2 この歌の決まり字は?

答えを見る

きみがためお(六字決まり)

問3 この歌の作者は?

答えを見る

藤原義孝

問4 「長くもがな」の「もがな」の品詞と意味を答えなさい。

答えを見る

願望の終助詞で、「〜であってほしい(なあ)」という意味です。「長くもがな」で「(命が)長くあってほしい」となります。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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