百人一首15番は、光孝天皇の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第15首の歌
| 和歌 | 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ |
|---|---|
| ひらがな | きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ |
| 読み方 | きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきわふりつつ |
| 歌番号 | 15 |
| 歌集 | 古今集 |
| 部立 | 春上・21番 |
| 作者・歌人 | 光孝天皇 |
| 色札 | 緑札 |
意味・現代語訳
春の野原へ出かけて、私は若菜を摘みとっている。それもみな、あなたに贈るためだ。そうしているあいだにも、私の袖には雪が次から次へと舞い落ちてくる。
ひとことで言うと、大切な人に贈る若菜を摘む袖に、春の雪が降りかかる情景をよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 君がため | あなたのために。ここでの「君」は若菜を贈る相手で、誰なのかは分かっていない。 |
| 若菜 | 春のはじめに野に芽を出す、食べられる草。食べると災いが去り、長生きできると考えられた。 |
| 衣手(ころもで) | 着物の袖のこと。主に和歌の中で使われる言葉。 |
| 若菜つむ | 若菜を摘んでいる。「つむ」は連体形で、下の「わが衣手」を修飾している。 |
| 降りつつ | しきりに降り続いている。「つつ」は、同じ動作がくり返し続くことを表す。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 君 | 名詞 | あなた(若菜を贈る相手) |
| が | 格助詞 | 連体修飾格(〜の)。「君がため」=あなたのため |
| ため | 名詞 | |
| 春 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 野 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| 出で | 動詞(ダ行下二段活用・連用形) | 基本形「出づ」 |
| て | 接続助詞 | 〜て |
| 若菜 | 名詞 | |
| つむ | 動詞(マ行四段活用・連体形) | 基本形「つむ(摘む)」。下の「わが衣手」を修飾 |
| わ | 代名詞 | 自分を指す(私) |
| が | 格助詞 | 連体修飾格(〜の)。「わが」=私の |
| 衣手 | 名詞 | 「ころもで」と読む。袖 |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| 雪 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 取り立て(〜は) |
| 降り | 動詞(ラ行四段活用・連用形) | 基本形「降る」 |
| つつ | 接続助詞 | 反復・継続(〜し続けて)。歌の終わりに置いて余韻を残す |
文法のポイント
- 「若菜つむ」の「つむ」は四段活用「つむ」の連体形で、下の「わが衣手」を修飾しています。四段活用は終止形と連体形が同じ形なので、下の名詞に続くかどうかで見分けます。ここで文は切れていません。
- 結句の「つつ」は、反復・継続を表す接続助詞です。歌の最後を「つつ」で止めると、言い切らずに終わるため余韻が生まれます。1番の「露にぬれつつ」、4番の「雪は降りつつ」も同じ終わり方です。
- 「君がため」の「が」は連体修飾格の格助詞で、「君がため」は「君のため」と同じ意味です。「わが衣手」の「わが」も、代名詞「わ」に同じ働きの「が」が付いた形です。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。上の句から下の句まで一続きの文で、最後の「つつ」で余韻を残して終わります。 |
作者:光孝天皇
光孝天皇(こうこうてんのう)。
830年〜887年。第58代の天皇で、在位は884〜887年です。仁明天皇の皇子で、名は時康といいます。陽成天皇が位を退いたあと、藤原基経に推されて55歳で即位しました。政治は基経に任せ、天皇に申し上げる事柄はまず基経に相談させたことから、これが関白の始まりとされています。亡くなる直前には、子の源定省(のちの宇多天皇)を皇太子に立てました。仁和の帝・小松の帝という呼び名もあります。12番の作者・遍昭とも親しく交わりました。
歌の背景と鑑賞
『古今和歌集』の春歌上に収められています。詞書によると、光孝天皇がまだ親王だったころ、ある人に若菜を贈ったときに添えた歌です。即位したのは55歳のときなので、それより前の作ということになります。若菜は春のはじめに摘む野草で、口にすれば邪気がしりぞき、病にかからず長寿を保てると信じられていました。若菜を人に贈るのは、相手の無事や長寿を願う意味もあったと見られています。贈った相手が誰なのかは分かっていません。摘み取る若菜の緑に、袖へ舞い落ちる雪の白が重なる色の取り合わせも美しく、冷え込みをいとわず相手のために野へ出た作者の思いやりが感じられます。なお、第二句「春の野に出でて」は8音で、1音多い字余りになっています。
出典:古今集(春上・21番)。詞書:光孝天皇がまだ親王でいらっしゃったころ、ある人に若菜をお贈りになったときの歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| きみがため はるののにいでて わかなつむ | わかころもてに ゆきはふりつつ |
決まり字は「きみがためは」の六字決まりです。同じ「きみがため」で始まる札に、50番「君がため」(決まり字「きみがためお」)があります。6文字目の「は」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
黄身固めは塩をふりつつ(「ふりつつ」は「田子の浦」もあるので注意)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「君がため 春の野に出でて 若菜つむ」に続く下の句は?
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わが衣手に 雪は降りつつ
問2 この歌の決まり字は?
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きみがためは(六字決まり)
問3 この歌の作者は?
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光孝天皇
問4 「若菜つむ」の「つむ」の活用形を答え、この句が歌の中でどのようにつながっているかを説明しなさい。
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四段活用「つむ」の連体形です。下の「わが衣手」を修飾し、「若菜を摘んでいる、私の袖に」とつながります。このように下の句へ続いているので、「若菜つむ」で文は切れていません(句切れなし)。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:14番 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
- 次の歌:16番 たち別れ いなばの山の 峰に生ふる
- 同じ色札の20首:緑札の一覧と練習
- 同じテーマの歌:春の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「古今集」
- 古今和歌集 巻第一 春歌上(歌番号付き古典本文)
- 全日本かるた協会 一日一首「君がため春の野に出でて若菜つむ我が衣手に雪は降りつつ」
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」15番
- 千人万首 光孝天皇
- 百人一首で始める古文書講座(15)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首15 現代語訳と解説
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)15番
- 短歌のこと 君がため春の野に出でて若菜摘む
- コトバンク「光孝天皇」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書・山川日本史小辞典ほか)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。