百人一首94番は、参議雅経の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第94首の歌
| 和歌 | み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり |
|---|---|
| ひらがな | みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり |
| 読み方 | みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり |
| 歌番号 | 94 |
| 歌集 | 新古今集 |
| 部立 | 秋下・483番 |
| 作者・歌人 | 参議雅経 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
夜がすっかりふけて、秋風が吉野の山を吹きおりてくる。(昔、離宮が置かれた)古い里では、砧で衣を打っているらしい。その音が冷え冷えと耳に届く。
ひとことで言うと、秋風の吹く夜ふけの吉野の里に、衣を打つ砧の音が寒々と響く情景を詠んだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| み吉野 | 今の奈良県吉野地方。「み」はほめる気持ちを添える接頭語。昔、離宮が置かれた。 |
| さ夜 | 夜のこと。「さ」は語の調子を整える接頭語で、「さ夜ふけて」の形でよく詠まれる。 |
| ふるさと | 昔、都や天皇の離宮が置かれていた土地。この歌では、かつてのにぎわいを失った吉野の里を指す。 |
| 衣うつ | 砧(きぬた)の台にのせた布を槌でたたき、やわらかくしてつやを出すこと。秋の夜の仕事とされた。 |
| なり | 耳に聞こえる音をもとに「〜しているようだ」と判断する気持ちを表す助動詞。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| み | 接頭語 | 美称(ほめる気持ちを添える) |
| 吉野 | 名詞 | 地名 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 山 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 秋風 | 名詞 | |
| さ | 接頭語 | 語調を整える |
| 夜 | 名詞 | |
| 更け | 動詞(カ行下二段活用「更く」・連用形) | 夜がふける |
| て | 接続助詞 | 単純な接続(〜て) |
| ふるさと | 名詞 | 古びた里。ここでは吉野の里 |
| 寒く | 形容詞(ク活用「寒し」・連用形) | 下の「衣うつ」にかかる |
| 衣 | 名詞 | 「ころも」と読む |
| うつ | 動詞(タ行四段活用「うつ」・終止形) | 打つ |
| なり | 助動詞「なり」(終止形・推定) | 伝聞・推定の「なり」。音を聞いて判断している(〜ようだ) |
文法のポイント
- 「衣うつなり」の「なり」は伝聞・推定の助動詞で、ここでは砧の音を耳で聞いて「打っているようだ」と判断する推定の意味です。終止形に付くので、体言や連体形に付く断定の「なり」とは接続で見分けます。
- 「み吉野」の「み」と「さ夜」の「さ」は、どちらも接頭語です。「み」はほめる気持ちを添え、「さ」は語の調子を整える働きをします。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。初句から結句まで切れ目なく続き、最後の推定の「なり」で結ばれます。 |
| 本歌取り | 一首全体 | 『古今集』の坂上是則の歌「み吉野の山の白雪つもるらし古里寒くなりまさるなり」をもとにしています。もとの是則の歌は、古里の冷えこみから山の雪を推し量る冬の歌です。この歌は場面を秋の夜に変え、秋風と砧を打つ音という、耳に届くものによって寒さを表しています。 |
作者:参議雅経
参議雅経(さんぎまさつね)。一般には「飛鳥井雅経(あすかいまさつね)」とも呼ばれます。
1170年〜1221年。藤原雅経ともいいます。刑部卿藤原頼経の次男です。父が源義経と親しかったことをとがめられて流罪になると、雅経は鎌倉に下り、源頼家に重んじられました。のちに後鳥羽院に呼ばれて京都に戻り、蹴鞠と和歌で院に仕え、『新古今和歌集』の撰者にも加えられました。鎌倉とのつながりはその後も続き、源実朝と藤原定家を結びつけた人物としても知られます。1220年に参議となっています。蹴鞠と和歌で知られる飛鳥井家の祖で、家集に『明日香井和歌集』があります。
歌の背景と鑑賞
『新古今集』の詞書は「擣衣の心を」で、砧で衣を打つことを題として詠んだ歌です。布をしなやかにし、つやを出すための砧打ちは、主に女性が夜なべ仕事として行いました。秋が深まるころによく聞かれた音で、秋のさびしさを表す題材として詠まれています。この歌は『古今集』の坂上是則の「み吉野の山の白雪つもるらし古里寒くなりまさるなり」をもとにした本歌取りです。是則が冬の吉野を詠んだのに対し、雅経が描くのは秋の夜ふけです。山から吹く風と、どこからか聞こえてくる砧の音が、里の寒さを伝えています。吉野は古くから天皇の離宮が置かれた土地で、ここでは今はさびれた「ふるさと」として詠まれています。姿の見えない砧の音だけが響く、静かな秋の夜を思い浮かべて味わいましょう。
出典:新古今集(秋下・483番)。詞書:「擣衣(たうい)の心を」とあり、砧(きぬた)で衣を打つことを題として詠んだ歌
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| みよしのの やまのあきかぜ さよふけて | ふるさとさむく ころもうつなり |
決まり字は「みよ」の二字決まりです。「み」で始まる札はほかに4枚あり、2文字目の「よ」で決まります。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
見よ ふるさと
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「み吉野の 山の秋風 さ夜更けて」に続く下の句は?
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ふるさと寒く 衣うつなり
問2 この歌の決まり字は?
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みよ(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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参議雅経
問4 「衣うつなり」の「なり」の文法的意味を答え、そう判断できる理由を説明しなさい。
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推定です。この「なり」は伝聞・推定の助動詞で、終止形「うつ」に付いています。また、姿は見えず、砧の音を耳で聞いて「打っているようだ」と判断している場面なので、推定の意味になります。
前後の歌・関連ページ
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- 同じ色札の20首:黄札(黄色)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:秋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「新古今集」
- 千人万首(やまとうた)飛鳥井雅経
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」94番
- 百人一首で始める古文書講座(94)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首94 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首094 品詞分解
- 百人一首94番(programming-cafe)
- コトバンク「飛鳥井雅経」(デジタル大辞泉・ブリタニカ国際大百科事典)
- コトバンク「擣衣」(デジタル大辞泉)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。