百人一首64番は、藤原定頼の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第64首の歌
| 和歌 | 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木 |
|---|---|
| ひらがな | あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ |
| 読み方 | あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ |
| 歌番号 | 64 |
| 歌集 | 千載集 |
| 部立 | 冬・420番 |
| 作者・歌人 | 藤原定頼 |
| 色札 | 橙札(オレンジ札) |
意味・現代語訳
東の空がうっすら白んできた夜明けどき。宇治川を包んでいた霧は、あちらで薄れ、こちらで切れて、少しずつほどけていく。その晴れ間ごとに、浅瀬に据えてある網代木が一本また一本と見えはじめ、やがて川筋のそこかしこに姿を現すことだ。
ひとことで言うと、明け方の宇治川で、薄れていく川霧の奥から網代の杭の列が浮かび上がる冬景色をうたった歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 朝ぼらけ | 空が白みはじめても、まだ明るくなりきらない夜明けの時分。この歌では、冬の宇治川の一日が始まる時刻を示す。 |
| 川霧(かわぎり) | 川の上に立ちこめる霧。宇治川の霧は、平安時代後期の歌に数多くよまれた。 |
| たえだえに | 切れたりつながったりしながら続くさま。ここでは、川霧があちこちで途切れ、晴れ間がまだらにできていくようす。 |
| あらはれわたる | 「わたる」は動詞の下に付き、動きが広く行き渡ることを示す。ここでは網代木が川筋の方々で次々に姿を見せること。 |
| 網代木(あじろぎ) | 冬、川の浅瀬で氷魚(鮎の稚魚)をとる仕掛け「網代」を支える杭。宇治川の名物だった。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 朝ぼらけ | 名詞 | 夜明けごろ |
| 宇治 | 名詞 | 地名 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 川霧 | 名詞 | |
| たえだえに | 形容動詞(ナリ活用・連用形) | 基本形「たえだえなり」。途切れ途切れに |
| あらはれ | 動詞(ラ行下二段活用・連用形) | 基本形「あらはる」 |
| わたる | 補助動詞(ラ行四段活用・連体形) | 一面に〜する。下の「瀬々の網代木」にかかる |
| 瀬々 | 名詞 | あちこちの浅瀬 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 網代木 | 名詞 |
文法のポイント
- 「わたる」は、動詞の連用形の後に付いて「一面に〜する」「ずっと〜し続ける」の意味を添える補助動詞です。「あらはれわたる」は「(あちこちに)一面に現れる」と訳します。
- 「あらはれわたる」の「わたる」は連体形で、下の「瀬々の網代木」を修飾しています。歌は名詞「網代木」で終わっていて、体言止めになっています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。夜明けから網代木が見えてくるまでを、一続きの流れでよんでいます。 |
| 体言止め | 瀬々の網代木 | 名詞「網代木」で歌を終え、霧の中から現れた冬の川の景色を印象深く残しています。 |
作者:藤原定頼
藤原定頼(ふじわらのさだより)。百人一首での作者名は「権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)」です。
995年〜1045年。55番の作者・藤原公任の長男です。参議を経て正二位権中納言まで進み、四条中納言と呼ばれました。書や音楽にもすぐれた人でした。60番の小式部内侍に、母の代作をほのめかす冗談を言って、見事な歌で言い返された話がよく知られています。家集に『定頼集』があり、『後拾遺集』以下の勅撰集に40首あまりが収められています。
歌の背景と鑑賞
『千載集』の詞書は、宇治を訪れた折の作であることを短く記すだけで、歌は冬の部に収められています。網代は、冬に宇治川の浅瀬に杭を並べ、氷魚(鮎の稚魚)をとる仕掛けで、宇治の冬を代表する景物でした。空が白むにつれて霧がほどけ、薄れた箇所から杭の列が一本、また一本と姿を見せる――刻々と変わっていく眺めを、見たままに写し取った叙景の歌です。宇治は都の貴族の別荘地で、『源氏物語』の宇治十帖の舞台でもあります。平安時代後期には、宇治の川霧をよんだ歌が数多く作られました。作者の定頼は55番の公任の子で、親子で百人一首に選ばれています。
出典:千載集(冬・420番)。詞書:宇治に出かけたときによんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| あさぼらけうじのかわぎり たえだえに | あらはれわたる せせのあしろき |
決まり字は「あさぼらけう」の六字決まりです。同じ「あさぼらけ」で始まる札に、31番「朝ぼらけ」(決まり字「あさぼらけあ」)があります。6文字目の「う」で区別しましょう。
覚え方
あさぼらけ、うしろからあたあ(字札の上段に「あたあ」と並ぶ)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに」に続く下の句は?
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あらはれわたる 瀬々の網代木
問2 この歌の決まり字は?
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あさぼらけう(六字決まり)
問3 この歌の作者は?
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藤原定頼(百人一首での作者名は「権中納言定頼」)
問4 「あらはれわたる」の「わたる」の働きと意味を答えなさい。
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動詞の連用形に付いて意味を添える補助動詞(ラ行四段活用・連体形)で、「一面に〜する」という意味です。霧の切れ間から網代木があちこちに現れるようすを表しています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:63番 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
- 次の歌:65番 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
- 同じ色札の20首:橙札(オレンジ札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:冬の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「千載集」
- 千載和歌集 巻第六 冬(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」64番
- 百人一首で始める古文書講座(64)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首64 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首064 品詞分解と解説
- 百人一首 64番(programming-cafe)
- コトバンク「藤原定頼」(日本人名大辞典)
- コトバンク「朝ぼらけ」「網代木」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。