これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首10番・蝉丸)

百人一首10番は、蝉丸の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第10首の歌

和歌 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
ひらがな これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
読み方 これやこの ゆくもかえるも わかれてわ しるもしらぬも おうさかのせき
歌番号 10
歌集 後撰集
部立 雑一・1089番
作者・歌人 蝉丸
色札 黄札

意味・現代語訳

これがあの、(都から東国へ)行く人も(都へ)帰る人も、ここで別れてはまた会い、知っている人も知らない人も(ここで行き会う)という逢坂の関なのだなあ。

ひとことで言うと、人々が別れてはまた出会う逢坂の関のにぎわいを、対になる言葉でリズムよくよんだ歌。

語句の意味

語句 意味
これやこの これがあの(名高い)。話に聞いていたものを、いま目の前にしている感動を表す。
行くも帰るも 行く人も帰る人も。連体形の下に「人」を補って読む。
知るも知らぬも 知っている人も知らない人も。「行くも帰るも」と同じ形の言い方。
逢坂の関 山城国と近江国の境の逢坂山にあった関所。都から東国へ向かう入り口にあたる。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
これ 代名詞
や 間投助詞 詠嘆「〜なあ」
こ 代名詞
の 格助詞 連体修飾格。「これやこの」で「これがあの」
行く 動詞(カ行四段活用「行く」・連体形) 下に「人」を補う(準体法)
も 係助詞 並列「〜も〜も」
帰る 動詞(ラ行四段活用「帰る」・連体形) 下に「人」を補う(準体法)
も 係助詞 並列
別れ 動詞(ラ行下二段活用「別る」・連用形)
て 接続助詞
は 係助詞 「ては」で動作のくり返し(別れてはまた会う)
知る 動詞(ラ行四段活用「知る」・連体形) 下に「人」を補う(準体法)
も 係助詞 並列
知ら 動詞(ラ行四段活用「知る」・未然形)
ぬ 助動詞「ず」(連体形・打消) 未然形に付く打消。下に「人」を補う
も 係助詞 並列
逢坂 名詞 地名。「逢ふ」との掛詞
の 格助詞 連体修飾格
関 名詞 体言止め

文法のポイント

  • 「知らぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形です。未然形「知ら」に付いている点で、連用形に付く完了の助動詞「ぬ」と見分けられます。
  • 「行くも帰るも」「知るも知らぬも」は、連体形の下に「人」を補って「行く人も帰る人も」と読みます。このような連体形の使い方を準体法といいます。
  • 「別れては」の「ては」は動作のくり返しを表し、下の「逢(坂)」と合わせて「別れてはまた会う」という意味になります。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。最後の「逢坂の関」まで一続きで読みます。
掛詞 逢坂 地名の「逢坂」に、人に「逢ふ」という意味を掛けています。
対句 行くも帰るも/知るも知らぬも 同じ形の句を並べ、「も」をくり返すことでリズムを生み、人の多さと行き来のようすを表しています。
体言止め 逢坂の関 名詞「関」で歌を結び、余韻を残しています。
歌枕 逢坂の関 逢坂の関は、別れや出会いを詠むときによく使われた名所(歌枕)です。

作者:蝉丸

蝉丸(せみまる)。

生没年不詳。平安時代の人とされる伝説的な歌人で、くわしい経歴はわかっていません。宇多天皇の皇子・敦実親王に仕えた雑色(下働きの者)とも、醍醐天皇の第四皇子とも伝えられています。目が見えず琵琶の名手で、逢坂の関のあたりに庵を結んで住んだと伝えられ、『今昔物語集』には、源博雅が三年通って秘曲を教わった話が載っています。勅撰集には『後撰和歌集』以下に4首が入っています。後の時代には能『蝉丸』などの題材にもなりました。

歌の背景と鑑賞

『後撰和歌集』雑一に入る歌で、詞書によると、逢坂の関に庵を作って住んでいたころ、行き来する人々を見てよんだものです。逢坂の関は山城国と近江国の境にあり、都から東国へ向かう人が通る関所でした。ここでは旅立つ人と見送る人が別れ、知っている人も知らない人も行き会います。「行く・帰る」「知る・知らぬ」「別れ・逢ふ」という対になる言葉を重ね、「も」をくり返すことで、人がにぎやかに行き交うようすをリズムよく表しています。出会いと別れをくり返す人の世の姿を重ねて読まれることも多くあります。なお、『後撰和歌集』では第三句が「別れつつ」となっており、百人一首の「別れては」とは言葉が異なります。

出典:後撰集(雑一・1089番)。詞書:逢坂の関に庵を作って住んでいたころ、行き来する人々を見てよんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき

決まり字は「これ」の二字決まりです。「こ」で始まる札はほかに5枚あり、2文字目の「れ」で決まります。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

これが大阪の関

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「これやこの 行くも帰るも 別れては」に続く下の句は?

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知るも知らぬも 逢坂の関

問2 この歌の決まり字は?

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これ(二字決まり)

問3 この歌の作者は?

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蝉丸

問4 「知るも知らぬも」の「ぬ」の意味と活用形を答えなさい。また、完了の助動詞「ぬ」ではないと判断できる理由を説明しなさい。

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打消の助動詞「ず」の連体形で、「知らない(人)」という意味です。すぐ上の「知ら」が未然形なので、連用形に付く完了の「ぬ」ではないとわかります。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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