恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首41番・壬生忠見)

百人一首41番は、壬生忠見の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第41首の歌

和歌 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
ひらがな こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
読み方 こいすちょう わがなわまだき たちにけり ひとしれずこそ おもいそめしか
歌番号 41
歌集 拾遺集
部立 恋一・621番
作者・歌人 壬生忠見
色札 緑札

意味・現代語訳

だれにも気づかれまいと、胸の中でそっと慕う気持ちが芽生えたところだった。それなのに、恋い慕う人がいるらしい、と私をうわさする声が、早々と世間に広がったよ。

ひとことで言うと、ひそかに始まったばかりの恋が、早くもうわさになった驚きをよんだ歌。

語句の意味

語句 意味
てふ 「といふ」がつまった形で、「〜という」の意味。読むときは「ちょう」と発音する。
名 世間でのうわさや評判。「名が立つ」で、うわさが広まること。
まだき まだその時期でもないのに。予想より早く、という意味の副詞。
人知れず 他人に気づかれることなく。胸の内だけで、ひそかに。
思ひそめしか 思い始めたのに。「そめ」は「初め」で、恋し始めたばかりであることを表す。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
恋す 動詞(サ行変格活用「恋す」・終止形) 恋をする
てふ 連語(格助詞「と」+動詞「いふ」がつまった形) 〜という。「ちょう」と読む。下の「名」にかかる
わ 代名詞 私
が 格助詞 連体修飾格(〜の)
名 名詞 うわさ、評判
は 係助詞 取り立て(〜は)
まだき 副詞 早くも
立ち 動詞(タ行四段活用「立つ」・連用形) (うわさが)立つ
に 助動詞「ぬ」(連用形・完了) 〜てしまった
けり 助動詞「けり」(終止形・詠嘆) ここで文が切れる
人 名詞 他人
知れ 動詞(ラ行下二段活用「知る」・未然形) 知られる
ず 助動詞「ず」(連用形・打消)
こそ 係助詞 強調。結びは「しか」(已然形)
思ひそめ 動詞(マ行下二段活用「思ひそむ」・連用形) 思い始める
しか 助動詞「き」(已然形・過去) 「こそ」の結び。逆接で上の句に続く

文法のポイント

  • 「こそ…しか」は係り結びで、「こそ」を受けて過去の助動詞「き」が已然形「しか」になっています。「こそ〜已然形」のあとに文が続くときは「〜のに」という逆接になり、この歌ではそれが倒置によって上の句にかかっています。
  • 「知れ」は下二段活用の「知る」で、「知られる」という意味です。四段活用の「知る(知っている)」とは、活用の種類も意味も違います。
  • 「てふ」は「といふ」がつまった形で、「ちょう」と発音します。「〜という」と訳します。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 三句切れ。「立ちにけり」の「けり」(終止形)で文がいったん切れます。
倒置 人知れずこそ思ひそめしか 下の句は意味の上では上の句の前に来る内容です。「人知れずこそ思ひそめしか、恋すてふわが名はまだき立ちにけり」の順番を入れかえています。

作者:壬生忠見

壬生忠見(みぶのただみ)。

生没年不詳。30番の作者、壬生忠岑の子で、幼いころは名多という名でした。摂津国で過ごした時期が長く、宮中に仕えるようになったのは村上天皇に呼ばれてからで、天皇の食事を調える御厨子所が勤め先でした。958年には摂津大目に任じられています。最後まで下級の役人でしたが、953年の内裏菊合など、宮中の歌の催しにたびたび加わりました。今日とりわけ語られるのは、平兼盛との勝負に敗れた960年の天徳内裏歌合の一件です。三十六歌仙の一人で、家集に『忠見集』があります。

歌の背景と鑑賞

『拾遺集』恋一の最初に置かれた歌で、詞書は「天暦御時歌合」です。天徳4年(960年)に村上天皇が開いた内裏歌合の最後の二十番で、平兼盛の「しのぶれど」の歌(40番)と組み合わされ、負けとされました。ただ、後世にはかえって忠見の歌を高く買う声もあり、『拾遺集』は負けたこの歌を恋の部の初めに置いています。鎌倉時代の『沙石集』には、負けたことを苦にした忠見が食事ものどを通らなくなって亡くなったという話が載っていますが、事実ではないと考えられています。思いが芽生えたばかりの段階で、早くも世間の話題にされてしまった戸惑いを、下の句を後ろに回した倒置で素直に表しています。

出典:拾遺集(恋一・621番)。詞書:村上天皇の時代の歌合(天徳4年〈960年〉の内裏歌合)でよんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
こいすちょう わがなはまだき たちにけり ひとしれすこそ おもひそめしか

決まり字は「こい」の二字決まりです。「こ」で始まる札はほかに5枚あり、2文字目の「い」で決まります。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

人知れず恋する

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり」に続く下の句は?

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人知れずこそ 思ひそめしか

問2 この歌の決まり字は?

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こい(二字決まり)

問3 この歌の作者は?

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壬生忠見

問4 「人知れずこそ思ひそめしか」の係り結びについて、係助詞と結びの語、その活用形を答えなさい。また、この部分の訳し方も説明しなさい。

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係助詞は強調の「こそ」で、結びは過去の助動詞「き」の已然形「しか」です。ここでは「こそ〜已然形」が逆接の意味になり、「誰にも知られぬよう胸の内で恋い始めたのに」と訳します。

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参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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