百人一首74番は、源俊頼の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第74首の歌
| 和歌 | 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを |
|---|---|
| ひらがな | うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを |
| 読み方 | うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとわ いのらぬものを |
| 歌番号 | 74 |
| 歌集 | 千載集 |
| 部立 | 恋二・708番 |
| 作者・歌人 | 源俊頼 |
| 色札 | 青札 |
意味・現代語訳
初瀬の山から吹きおろす風よ。(長谷寺の観音に、)冷たいそぶりのあの人(がこちらを向くよう)にと、私は祈ったのだ。(お前が吹き荒れるように、相手の薄情さまで)激しさを増せとまでは、ひとことも願わなかったはずなのに。
ひとことで言うと、観音に祈っても振り向かない人への嘆きを、初瀬の山おろしへの呼びかけでよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 憂かりける人 | こちらが思いを寄せても、心を向けてくれなかった冷たい人。 |
| 初瀬(はつせ) | 大和国(今の奈良県桜井市)の地名。観音で名高い長谷寺があり、恋の願いをかける人も多かった。 |
| 山おろし | 山から吹きおろしてくる、激しく冷たい風。 |
| はげしかれ | 激しくあれ。風の激しさと、相手の冷たさがきびしくなることを重ねている。 |
| ものを | 「〜のになあ」と、思いどおりにならない不満や嘆きをこめて言い終える言葉。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 憂かり | 形容詞(ク活用「憂し」・連用形) | 補助活用(カリ活用)の形。つれない |
| ける | 助動詞「けり」(連体形・過去) | 下の「人」を修飾する |
| 人 | 名詞 | 恋の相手 |
| を | 格助詞 | 対象(〜を)。下の「祈ら」にかかる |
| 初瀬 | 名詞 | 地名。「はつせ」と読む |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 山おろし | 名詞 | 山から吹きおろす風 |
| よ | 間投助詞 | 呼びかけ(〜よ)。ここで意味が切れる |
| はげしかれ | 形容詞(シク活用「はげし」・命令形) | 激しくあれ |
| と | 格助詞 | 引用(〜と) |
| は | 係助詞 | 取り立て(〜とは) |
| 祈ら | 動詞(ラ行四段活用「祈る」・未然形) | |
| ぬ | 助動詞「ず」(連体形・打消) | 〜ない |
| ものを | 終助詞 | 詠嘆(〜のになあ)。逆接の接続助詞とする説明もある |
文法のポイント
- 「祈らぬ」の「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形です。上の「祈ら」が未然形なので、連用形に付く完了の助動詞「ぬ」ではないと判断できます。
- 「はげしかれ」は形容詞「はげし」の命令形で、「激しくあれ」という意味です。形容詞の命令形は、補助活用(カリ活用)の「〜かれ」の形になります。
- 「憂かりける」は、形容詞「憂し」の補助活用の連用形「憂かり」に、過去の助動詞「けり」の連体形「ける」が付いた形です。形容詞が助動詞に続くときは、補助活用を使います。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 三句切れ。「山おろしよ」と呼びかけたところで意味が切れます。 |
| 擬人法 | 山おろしよ | 山から吹きおろす風を人のように扱い、「山おろしよ」と呼びかけて、思いを訴えています。 |
| 縁語 | 山おろし・はげしかれ | 「はげしかれ」は、激しく吹く「山おろし」の縁語です。相手のつれなさがますます強まったことを、風の激しさに重ねています。 |
| 序詞 | 初瀬の山おろしよ | 「初瀬の山おろしよ」を、「はげし」を導く序詞とみる説もあります。 |
| 字余り | 山おろしよ | 第三句「やまおろしよ」が6音で、字余りになっています。 |
作者:源俊頼
源俊頼(みなもとのとしより)。百人一首での作者名は「源俊頼朝臣(みなもとのとしよりあそん)」です。
1055年〜1129年。平安時代後期の歌人で、71番の作者源経信の三男、85番の作者俊恵の父です。堀河天皇の時代の歌壇で中心となった歌人ですが、もともとは篳篥(雅楽の管楽器)を吹く楽人として天皇のそばに仕えていました。官位は従四位上木工頭にとどまり、父のようには出世できませんでした。白河院の命で『金葉和歌集』を撰び、歌論書『俊頼髄脳』、家集『散木奇歌集』を残しました。新しい表現を求める歌風で、伝統を重んじた藤原基俊と並び称されました。
歌の背景と鑑賞
千載集の詞書によると、藤原俊忠(藤原俊成の父)の家で恋の歌を十首よんだとき、「祈れども逢はざる恋」という題でよんだ歌です。初瀬には観音で名高い長谷寺があり、恋の願いにも力を貸してくれる観音として信じられていました。歌の中の「私」は、つれない人の心がなびくよう観音にすがったのに、その人の態度はかえって冷たさを増してしまいました。題に合わせて思いえがいた恋の場面で、作者自身の体験とは限りません。嘆きを向ける相手は、観音でも恋人でもなく、長谷寺の山から吹いてくる冷たい山おろしです。この思いがけない呼びかけ方が、やりきれなさを際立たせています。藤原定家は『近代秀歌』で、この歌を心が深く、まねをしようとしてもなかなかよめない歌だと、たいへん高く評価しています。
出典:千載集(恋二・708番)。詞書:権中納言藤原俊忠の家で恋の歌を十首よんだとき、「祈れども逢はざる恋(祈っても逢えない恋)」という題でよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| うかりける ひとをはつせの やまおろし | はけしかれとは いのらぬものを |
決まり字は「うか」の二字決まりです。同じ「う」で始まる札に、65番「恨みわび」(決まり字「うら」)があります。2文字目の「か」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
うっかりしてると はげる
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ」に続く下の句は?
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はげしかれとは 祈らぬものを
問2 この歌の決まり字は?
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うか(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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源俊頼(百人一首での作者名は「源俊頼朝臣」)
問4 「祈らぬものを」の「ぬ」は、完了の助動詞「ぬ」と打消の助動詞「ず」のどちらか。理由とともに答えなさい。
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打消の助動詞「ず」の連体形です。上の「祈ら」がラ行四段活用の未然形なので、未然形に付く「ず」だとわかります。完了の助動詞「ぬ」は連用形に付きます。
前後の歌・関連ページ
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- 次の歌:75番 契りおきし させもが露を 命にて
- 同じ色札の20首:青札の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「千載集」
- 千載和歌集 巻十二 恋二(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」74番
- 百人一首で始める古文書講座(74)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首74 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首074 品詞分解と解説
- 短歌のこと 憂かりける人を初瀬の山おろしよ
- 左大臣光永 小倉百人一首 音声つき「憂かりける」
- 千人万首(やまとうた)源俊頼
- コトバンク「源俊頼」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典)
- Weblio古語辞典(学研全訳古語辞典)「ものを」「よ」
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。