今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首63番・左京大夫道雅)

百人一首63番は、左京大夫道雅の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第63首の歌

和歌 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
ひらがな いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
読み方 いまわただ おもいたえなん とばかりを ひとづてならで いうよしもがな
歌番号 63
歌集 後拾遺集
部立 恋三・750番
作者・歌人 左京大夫道雅
色札 橙札(オレンジ札)

意味・現代語訳

「こうなった今は、この恋心をきっぱり捨てます」――せめてその一言だけは、使いの者に託さず、自分の口からじかに(あなたに)告げたい。そのための手だてが、どこかにないものか。

ひとことで言うと、仲を裂かれた恋人に、別れの一言だけでもじかに伝えたいと願う切ない歌。

語句の意味

語句 意味
思ひ絶ゆ(おもいたゆ) 恋しく思う気持ちを断ち切ること。あきらめる、思い切る。
ばかり 範囲をしぼる働きの副助詞。ここでは、ほかのことは言えなくても「思い切ります」の一言に限っては、という気持ち。
人づて 間に人を立てて言葉を伝えること。ここでは使いの者や手紙に頼ることを指す。
よし 手段・方法。「言ふよし」で、じかに言うための手だて。
もがな 願望を表す終助詞。「〜があればいいなあ」と、かないそうにないことを願う気持ち。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
今 名詞
は 係助詞 取り立て(〜は)
ただ 副詞 ひたすら・もう
思ひ絶え 動詞(ヤ行下二段活用・連用形) 基本形「思ひ絶ゆ」。あきらめる
な 助動詞「ぬ」(未然形・強意) きっと
む 助動詞「む」(終止形・意志) 〜しよう
と 格助詞 引用(〜と)
ばかり 副助詞 限定(〜だけ)
を 格助詞 動作の対象(〜を)
人づて 名詞 人を介して伝えること
なら 助動詞「なり」(未然形・断定) 〜で
で 接続助詞 打消の接続(〜ではなくて)
言ふ 動詞(ハ行四段活用・連体形) 下の「よし」にかかる
よし 名詞 方法・手段
もがな 終助詞 願望(〜があればなあ)

文法のポイント

  • 「思ひ絶えなむ」の「なむ」は、強意の助動詞「ぬ」の未然形「な」と、意志の助動詞「む」が合わさった形で、「きっと〜しよう」と訳します。連用形に付いている点で、未然形に付く願望の終助詞「なむ」と見分けます。
  • 「もがな」は願望の終助詞で、「〜があればいいなあ」と訳します。「言ふよしもがな」は「言う方法があればなあ」という意味で、実際にはその手だてがないことを嘆いています。
  • 「人づてならで」の「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形、「で」は打消の接続助詞で、「人づてではなくて」となります。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。一首全体が「〜と言う方法があればなあ」という一つの願いになっています。

作者:左京大夫道雅

左京大夫道雅(さきょうのだいぶみちまさ)。一般には「藤原道雅(ふじわらのみちまさ)」とも呼ばれます。

992年〜1054年。関白藤原道隆を祖父に、内大臣藤原伊周を父に持つ家に生まれました。幼いうちに道隆に先立たれ、翌年には伊周も失脚したため、一族は急速に力を失いました。1016年に従三位となりますが、伊勢から戻った前斎宮・当子内親王とひそかに通じたことで三条院の勘気をこうむり、官界では振るいませんでした。のちに左京大夫を務めています。素行の荒さでも知られ、「荒三位」「悪三位」とあだ名されたと伝えられています。

歌の背景と鑑賞

『後拾遺集』の詞書によると、伊勢の斎宮を務めて都に戻った女性のもとへひそかに通っていたことが知られ、見張りの女房が付けられて、忍んで会うこともできなくなったときの歌です。この女性は三条院の皇女・当子内親王で、父の三条院が二人の仲を強く許しませんでした。後拾遺集には同じ事情でよまれた道雅の歌が3首続けて並び、この歌はその最後に置かれています。会えないならせめて別れの言葉だけでも本人に、と願う気持ちを、技巧を用いずにまっすぐな言葉でよんでいます。二人の恋のゆくえは『栄花物語』にも語られ、当子内親王はのちに出家して、若くして亡くなりました。

出典:後拾遺集(恋三・750番)。詞書:伊勢の斎宮を務めて都に戻った方のもとへひそかに通っていたが、それが院にも知られて見張りの女房が付けられ、忍んで通うこともできなくなったのでよんだ歌(同じ詞書のもとに3首並ぶうちの1首)。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
いまはただ おもいたえなんと ばかりを ひとつてならて いふよしもかな

決まり字は「いまは」の三字決まりです。同じ「いま」で始まる札に、21番「今来むと」(決まり字「いまこ」)があります。3文字目の「は」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

いまは ひとつ(一期一会です。今を大切に)

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを」に続く下の句は?

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人づてならで 言ふよしもがな

問2 この歌の決まり字は?

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いまは(三字決まり)

問3 この歌の作者は?

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左京大夫道雅

問4 「思ひ絶えなむ」の「な」と「む」を、それぞれ文法的に説明しなさい。

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「な」は強意(完了)の助動詞「ぬ」の未然形、「む」は意志の助動詞「む」の終止形です。合わせて「きっと思い切ってしまおう」という強い決意を表しています。

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参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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