心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首68番・三条院)

百人一首68番は、三条院の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第68首の歌

和歌 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
ひらがな こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
読み方 こころにも あらでうきよに ながらえば こいしかるべき よわのつきかな
歌番号 68
歌集 後拾遺集
部立 雑一・860番
作者・歌人 三条院
色札 緑札

意味・現代語訳

本意ではないけれど、この先もつらいことばかりの世の中で長く生きることになったとしよう。そのとき、必ずや恋しさとともに心によみがえるのが、(今夜ながめている)この夜ふけの月なのだなあ。

ひとことで言うと、病のため退位を考えていたころ、明るい月を見て、つらい世と月への思いをよんだ歌。

語句の意味

語句 意味
心にもあらで 自分の本当の気持ちに反して。ここでは、望んでいないのに生き続けることを表している。
うき世 つらく苦しいことの多いこの世の中。「うき」は、つらいという意味の形容詞「憂し」から来ている。
ながらふ この世に長く生き続けること。「ながらへば」は、まだ起きていないことを仮に考える言い方。
恋しかるべき (あとになって)恋しく思われるにちがいない、という推量。下の「夜半の月」を修飾している。
夜半(よは) 夜がふけたころ、夜中のこと。読み上げでは「よわ」と発音する。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
心 名詞
に 助動詞「なり」(連用形・断定) 下の「あら」と合わせて「〜である」
も 係助詞 強調
あら 動詞(ラ行変格活用「あり」・未然形) 補助動詞
で 接続助詞 打消の接続(〜ないで)。未然形に付く
うき世 名詞 形容詞「憂し」の連体形「うき」に「世」が付いてできた語
に 格助詞 場所(〜に)
ながらへ 動詞(ハ行下二段活用「ながらふ」・未然形) 生き長らえる
ば 接続助詞 順接の仮定条件(もし〜ならば)
恋しかる 形容詞(シク活用「恋し」・連体形) 補助活用(カリ活用)の形
べき 助動詞「べし」(連体形・推量) 〜にちがいない。下の「夜半の月」にかかる
夜半 名詞 「よは」と読む。夜中
の 格助詞 連体修飾格(〜の)
月 名詞
かな 終助詞 詠嘆(〜だなあ)

文法のポイント

  • 「心にもあらで」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形で、「あら」は補助動詞「あり」の未然形です。「に+(係助詞)+あり」で「〜である」の意味になります。「で」は未然形に付く打消の接続助詞で、「〜ないで」と訳します。
  • 「ながらへば」は下二段活用「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」が付いた形なので、順接の仮定条件(もし〜ならば)を表します。已然形に「ば」が付く確定条件との区別がよく問われます。
  • 「べし」は終止形に付く助動詞ですが、形容詞には補助活用(カリ活用)の連体形に付きます。そのため「恋し」は「恋しかる」の形になっています。「べき」は連体形で、下の「夜半の月」を修飾しています。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。上の句の仮定の言い方が下の句へ続き、最後の「かな」で詠嘆して終わります。

作者:三条院

三条院(さんじょういん)。一般には「三条天皇(さんじょうてんのう)」とも呼ばれます。

976年〜1017年。第67代の天皇で、在位は1011〜1016年です。冷泉天皇の第2皇子で、母は藤原兼家の娘の超子です。皇太子の期間がたいへん長く、11歳で皇太子に立てられた986年から、36歳で即位する1011年まで待たなければなりませんでした。在位中は、政治の実権をにぎる藤原道長と対立しました。道長は孫の敦成親王を早く天皇にしたいと考え、目の病気が重くなった天皇に退位を迫りました。内裏がたびたび焼けたこともあり、1016年に敦成親王(後一条天皇)へ位を譲り、翌年に亡くなりました。

歌の背景と鑑賞

後拾遺集の詞書によると、この歌は、天皇が病気で位を退こうと考えていたころ、明るい月をご覧になってよんだものです。『栄花物語』では、長和4年(1015年)12月の十日過ぎの月の明るい夜に、中宮の妍子(藤原道長の娘)に向けてよんだ歌として伝えられています。天皇は翌年の正月に位を譲りました。「心にもあらで」という言葉からは、この先長く生きたいとは思っていない気持ちが読み取れます。それでも、もし生き続けたなら、この夜の月をなつかしく思い出すだろうとよんでいます。目の前の月を、すでに未来の思い出として見ているところに、この歌の深い悲しみがあります。

出典:後拾遺集(雑一・860番)。詞書:天皇が病気で、位を退こうとお考えになっていたころ、月が明るく照っているのをご覧になってよんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
こころにも あらでうきよに ながらえば こひしかるへき よはのつきかな

決まり字は「こころに」の四字決まりです。同じ「こころ」で始まる札に、29番「心あてに」(決まり字「こころあ」)があります。4文字目の「に」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

心に小石

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「心にも あらでうき世に ながらへば」に続く下の句は?

答えを見る

恋しかるべき 夜半の月かな

問2 この歌の決まり字は?

答えを見る

こころに(四字決まり)

問3 この歌の作者は?

答えを見る

三条院

問4 「心にもあらで」の「に」と「で」を、それぞれ文法的に説明しなさい。

答えを見る

「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「で」は打消の接続助詞です。「で」は未然形に付いて「〜ないで」と訳し、「心にもあらで」全体で「本意ではなくて」という意味になります。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

  • URLをコピーしました!
目次