百人一首44番は、藤原朝忠の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第44首の歌
| 和歌 | 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし |
|---|---|
| ひらがな | あふことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし |
| 読み方 | おうことの たえてしなくば なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし |
| 歌番号 | 44 |
| 歌集 | 拾遺集 |
| 部立 | 恋一・678番 |
| 作者・歌人 | 藤原朝忠 |
| 色札 | 橙札(オレンジ札) |
意味・現代語訳
逢う機会など一度もないというのなら、(望みを持ちようもないので)冷たいあの人を恨むことも、報われない自分の身の上を恨めしく思うことも、かえってせずにすむだろうに。
ひとことで言うと、なまじ逢えることがあるために、相手も自分も恨んでしまう恋の苦しさをよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 逢ふ(あふ) | ここでは、恋人どうしとして顔を合わせ、結ばれること。その機会がめったにない状況をいう。 |
| 絶えて | 後ろの「なく」と組んで、「一度も〜ない」と打ち消しを強めている。 |
| なかなかに | この歌では、「たまに逢えるせいで苦しむくらいなら、一度も逢えないほうが楽だ」という逆転の発想を導く。「かえって」と訳す。 |
| 人をも身をも | 恨む相手を二つ並べた言い方。一つはつれなくふるまう恋人、もう一つは、思うようにならない作者自身の身の上。 |
| 恨みざらまし | 「もし〜なら、恨まなかっただろうに」と、現実とは逆のことを想像する言い方。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 逢ふ | 動詞(ハ行四段活用「逢ふ」・連体形) | 恋人として会う。下の「こと」にかかる |
| こと | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格(〜が) |
| 絶えて | 副詞 | 下に打消を伴って「まったく〜ない」 |
| し | 副助詞 | 強意 |
| なく | 形容詞(ク活用「なし」・連用形) | 未然形とする説明もある |
| は | 係助詞 | 連用形について仮定条件を表す(〜ならば) |
| なかなかに | 形容動詞(ナリ活用「なかなかなり」・連用形) | かえって。副詞とする説明もある |
| 人 | 名詞 | 恋の相手 |
| を | 格助詞 | 対象(〜を) |
| も | 係助詞 | 並列(〜も) |
| 身 | 名詞 | 自分自身 |
| を | 格助詞 | 対象(〜を) |
| も | 係助詞 | 並列(〜も) |
| 恨み | 動詞(マ行上二段活用「恨む」・未然形) | |
| ざら | 助動詞「ず」(未然形・打消) | |
| まし | 助動詞「まし」(終止形・反実仮想) | 〜だろうに |
文法のポイント
- 「なくは〜まし」は、「もし〜がないならば、…だろうに」と現実とは反対のことを仮定する反実仮想の形です。実際には逢う機会があるからこそ恨まずにいられない、という気持ちが裏にあります。
- 「絶えて」は下に打消の語を伴う呼応の副詞で、「まったく〜ない」という意味になります。間にある「し」は強意の副助詞で、訳には表さなくてもかまいません。
- 「恨み」はマ行上二段活用「恨む」の未然形です。古文の「恨む」は四段活用ではないので、「恨ま」としないように気をつけましょう。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。一首全体が「もし〜なら、…だろうに」という一続きの文になっています。 |
作者:藤原朝忠
藤原朝忠(ふじわらのあさただ)。百人一首での作者名は「中納言朝忠(ちゅうなごんあさただ)」です。
910年〜966年。三条右大臣藤原定方(25番の作者)の五男で、963年に中納言となり、土御門中納言とも呼ばれました。醍醐・朱雀・村上の三代の天皇に仕え、笙(しょう)の演奏にすぐれていたとされています。960年の天徳内裏歌合では、全体の幕開けとなる最初の組に歌が採られました。右近をはじめ、宮仕えの女性たちと交わした恋歌もいくつも残っています。三十六歌仙の一人で、家集に『朝忠集』があります。
歌の背景と鑑賞
拾遺集の詞書は「天暦御時歌合に」で、村上天皇の時代の歌合でよまれた歌です。960年(天徳4年)の内裏歌合に出された歌として知られています。上の句で「もし逢うことが一度もなかったら」と現実とは逆の場面を思い描き、下の句で「それなら相手も自分も恨まずにすんだのに」と結んでいます。裏返せば、わずかでも逢える望みが残っているせいで期待を捨てきれず、かえってつらさが増していく、という心の動きです。どんな段階の恋かについては読み方が分かれます。拾遺集では、まだ一度も逢えていない恋(未逢恋)の歌の中に置かれています。一方、藤原定家やのちの百人一首の注釈書は、一度は逢ったのにその後逢えなくなった恋(逢不逢恋)の歌として読んできたと説明されています。
出典:拾遺集(恋一・678番)。詞書:天暦御時歌合に(村上天皇の時代に開かれた歌合でよんだ歌)
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| おおことの たえてしなくば なかなかに | ひとをもみをも うらみさらまし |
決まり字は「おおこ」の三字決まりです。同じ「おお」で始まる札に、60番「大江山」(決まり字「おおえ」)、95番「おほけなく」(決まり字「おおけ」)があります。3文字目の「こ」で区別しましょう。
覚え方
おおこみみ(字札は「みみ」と並ぶ)(「おおけそそ」とセット)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに」に続く下の句は?
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人をも身をも 恨みざらまし
問2 この歌の決まり字は?
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おおこ(三字決まり)
問3 この歌の作者は?
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藤原朝忠(百人一首での作者名は「中納言朝忠」)
問4 この歌で使われている、現実とは反対のことを仮定する表現を何といいますか。また、その意味を表す助動詞を答えなさい。
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反実仮想です。助動詞は「まし」で、「なくは〜まし」の形で「もし〜がないならば、…だろうに」という意味を表します。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:43番 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
- 次の歌:45番 あはれとも いふべき人は 思ほえで
- 同じ色札の20首:橙札(オレンジ札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「拾遺集」
- 拾遺和歌集 巻十一 恋歌一(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」44番
- 百人一首で始める古文書講座(44)
- マナペディア 百人一首44 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首044 品詞分解と解説
- 百人一首44番(programming-cafe)
- 千人万首 藤原朝忠
- コトバンク「藤原朝忠」(精選版 日本国語大辞典・デジタル版 日本人名大辞典)
- Weblio古語辞典(学研全訳古語辞典)「ずは」
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。