百人一首87番は、寂蓮法師の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第87首の歌
| 和歌 | 村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ |
|---|---|
| ひらがな | むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ |
| 読み方 | むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆうぐれ |
| 歌番号 | 87 |
| 歌集 | 新古今集 |
| 部立 | 秋下・491番 |
| 作者・歌人 | 寂蓮法師 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
ひとしきり降ったにわか雨がやんだばかりで、檜や杉の葉はまだしずくにぬれたままだ。その葉のまわりに、霧がしだいに立ちのぼりはじめた。秋の夕暮れどきのことだ。
ひとことで言うと、にわか雨の後、濡れた木々から霧が立ちのぼる秋の夕暮れの景色をよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 村雨 | この歌では、秋の夕方にさっと降って上がった雨。急に降りだし、長くは続かない雨をいう。 |
| 露 | ここでは、にわか雨が残していった葉の上の水滴。 |
| ひ(干る) | 乾く。水気がなくなる。「まだひぬ」で、まだ乾かない。 |
| 真木 | この歌では、雨にぬれた杉や檜などの木立。頭の「ま」は、木をほめたたえる気持ちを添える語。 |
| 霧 | 雨上がりの木々のあたりにたちこめる、細かな水の粒。和歌では秋の景物とされ、春の同じようなものは「霞」とよばれる。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 村雨 | 名詞 | にわか雨 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 露 | 名詞 | 雨のしずく |
| も | 係助詞 | 〜も |
| まだ | 副詞 | |
| ひ | 動詞(ハ行上一段活用「干る」・未然形) | 乾く |
| ぬ | 助動詞「ず」(連体形・打消) | 〜ない。下の「真木」にかかる |
| 真木 | 名詞 | 杉・檜などの常緑の木 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 葉 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| 霧 | 名詞 | |
| 立ちのぼる | 動詞(ラ行四段活用「立ちのぼる」・連体形) | 「立つ」と「のぼる」が合わさった語。下の「秋の夕暮れ」にかかる |
| 秋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 夕暮れ | 名詞 |
文法のポイント
- 「ひぬ」の「ひ」はハ行上一段活用「干る(ひる)」の未然形です。上一段活用の動詞は「干る・射る・着る・似る・煮る・見る・居る」などに限られ、「ひいきにみゐる」と覚えておくと便利です。
- 「ひぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、下の名詞「真木」にかかっています。「ひ」は未然形と連用形が同じ形ですが、完了の「ぬ」なら連体形は「ぬる」になるので、打消と判断できます。
- 「霧立ちのぼる」では、主語「霧」のあとの「が」にあたる助詞が省かれています。和歌では、このような助詞の省略がよく見られます。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。雨上がりの葉から霧が立ちのぼる景色が、結句までひと続きに描かれています。 |
| 体言止め | 秋の夕暮れ | 名詞「夕暮れ」で歌を終え、もの寂しい秋の夕方の気配を余韻として残しています。 |
作者:寂蓮法師
寂蓮法師(じゃくれんほうし)。一般には「寂蓮(じゃくれん)」とも呼ばれます。
1139年ごろ〜1202年。平安時代末期から鎌倉時代初期の僧・歌人で、出家前の名は藤原定長です。藤原俊成の兄弟である僧・俊海の子で、おじの俊成の養子となりました。藤原定家とはいとこにあたります。三十代で出家し、諸国をめぐって歌を詠みました。六条藤家の顕昭と『六百番歌合』の場で激しく言い争ったことは有名です。1201年に『新古今和歌集』の撰者の一人に選ばれましたが、完成を待たずに翌年亡くなりました。
歌の背景と鑑賞
新古今集の詞書によると、五十首歌を献上したときの歌で、1201年に後鳥羽院が催した「老若五十首歌合」でよまれたものです。にわか雨が上がったばかりの夕方、まだ濡れている木々の葉のあたりから、霧が静かに立ちのぼっていきます。悲しい・さびしいといった心を表す言葉は使わず、目の前の景色だけを描いているのが特徴です。雨、露、霧と水に関わるものが次々に現れ、時間の流れとともに景色が移り変わっていく点に注目しましょう。最後を「秋の夕暮れ」と名詞で止めることで、しんみりとした秋の気配が余韻として残ります。作者の寂蓮は「さびしさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮れ」という歌でも知られ、西行・藤原定家の歌とあわせて「三夕(さんせき)の歌」と呼ばれています。
出典:新古今集(秋下・491番)。詞書:五十首歌を献上したとき(1201年の老若五十首歌合)の歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに | きりたちのほる あきのゆふくれ |
決まり字は「む」の一字決まりです。最初の「む」で始まる歌はこの1首だけなので、1文字目で取れます。
覚え方
霧(きり)は「む」と読む
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に」に続く下の句は?
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霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
問2 この歌の決まり字は?
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む(一字決まり)
問3 この歌の作者は?
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寂蓮法師
問4 「露もまだひぬ」の「ひ」の基本形と、活用の種類・活用形を答えなさい。
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基本形は「干る(ひる)」で、ハ行上一段活用の未然形です。下の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、「まだ乾かない」という意味になります。
前後の歌・関連ページ
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- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 新古今和歌集 巻第五 秋下(歌番号付き古典本文)
- 全日本かるた協会「一日一首」村雨の露もまだひぬ
- 千人万首(やまとうた)寂蓮
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」87番
- マナペディア 百人一首87 現代語訳と解説(品詞分解)
- 百人一首で始める古文書講座(87)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)87番
- コトバンク「寂蓮」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・百科事典マイペディア)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。