忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな|意味・現代語訳と品詞分解(百人一首54番・儀同三司母)

百人一首54番は、儀同三司母の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。

意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題

目次

【百人一首】第54首の歌

和歌 忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
ひらがな わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
読み方 わすれじの ゆくすえまでわ かたければ きょうをかぎりの いのちともがな
歌番号 54
歌集 新古今集
部立 恋三・1149番
作者・歌人 儀同三司母
色札 緑札

意味・現代語訳

(あなたが口にした)「忘れはしない」との誓いが、行く末までずっと続くとは考えにくい。それならば、(喜びに満ちた)今日という日のうちに、この命が絶えてくれたらと願う。

ひとことで言うと、愛の誓いを受けた幸せの中で、先の不安から今日で命が終わればと願う歌。

語句の意味

語句 意味
忘れじ 恋人の男性が口にした「あなたをけっして忘れはしない」という約束。「じ」は、自分はそうしないという打消の意志を表す。
行く末 これから先の、はるかな将来。男性の誓いがどこまで続くかという先行きのこと。
かたければ 難しいので。心変わりせずに誓いが守られ続けることは難しい、という見通しを表す。
今日を限りの命 今日で終わる命。幸せの絶頂にある今日を、人生の最後にしたいという気持ち。
もがな 「〜であってほしい」と願う気持ちを表す。ここでは、命が今日で終わることを願っている。

品詞分解

上の句から順に、1語ずつ分けています。

語 品詞 意味・働き
忘れ 動詞(ラ行下二段活用「忘る」・未然形)
じ 助動詞「じ」(終止形・打消意志) 〜まい
の 格助詞 連体修飾格。「忘れじ」という言葉の
行く末 名詞 将来
まで 副助詞 範囲・限度(〜まで)
は 係助詞 取り立て
かたけれ 形容詞(ク活用「かたし」・已然形) 難しい
ば 接続助詞 順接確定条件(〜ので)
今日 名詞 「けふ」と読む
を 格助詞 対象(〜を)
限り 名詞 最後
の 格助詞 連体修飾格(〜の)
命 名詞
と 格助詞 〜として。〜で
もがな 終助詞 願望(〜であればなあ)

文法のポイント

  • 「忘れじ」の「じ」は打消意志の助動詞で、話し手自身の行動について使うと「〜するまい」と訳します。ここでは男性の「あなたを忘れまい」という誓いの言葉を、そのまま引用しています。
  • 「かたければ」は形容詞「かたし」の已然形に接続助詞「ば」がついた順接確定条件で、「難しいので」と訳します。未然形+「ば」の仮定条件(〜ならば)と区別しましょう。
  • 「もがな」は願望の終助詞で、「〜があればなあ」「〜であればなあ」と訳します。56番の「逢ふこともがな」、63番の「言ふよしもがな」など、百人一首にくり返し出てきます。

表現技法

技法 箇所 説明
句切れ – 句切れなし。「かたければ」で理由を述べ、結句の「もがな」で願いを言い切る一続きの文です。

作者:儀同三司母

儀同三司母(ぎどうさんしのはは)。一般には「高階貴子(たかしなのきし)」とも呼ばれます。

生年不詳〜996年。学者の家柄である高階成忠の娘で、名は「たかこ」とも読みます。円融天皇に仕え、漢字をよく書いたことから内侍に任じられ、高内侍(こうのないし)と呼ばれました。のちに藤原道隆の妻となり、伊周・隆家と、一条天皇の中宮定子を生みました。息子の伊周が「儀同三司」(大臣に準じる待遇の呼び名)と称したことから、儀同三司母と呼ばれます。995年に道隆が亡くなり、翌996年に伊周・隆家が都から遠ざけられると、同じ年に亡くなりました。

歌の背景と鑑賞

新古今集の詞書によると、のちに関白となる藤原道隆が作者のもとに通いはじめたころの歌です。「忘れじ」は、二人で語り合う中で男性が口にした誓いの言葉と説明されています。作者はその言葉をうれしく思いつつも、人の心は移ろうもので、約束がいつまでも守られるとは信じきれずにいます。そのうえで、喜びの頂にある今日のうちに、命が果ててほしいと願っています。結ばれたばかりの喜びと、先の見えない心細さとが一首の中に同居しており、それを言葉のしかけに頼らず率直に表しています。この歌は早い時期から名歌として知られ、藤原公任の『前十五番歌合』にも選ばれています。ただ、平安時代の勅撰集には入らず、新古今集で初めて勅撰集に採られ、恋歌三の巻頭を飾っています。のちに夫を亡くし、息子たちが失脚した作者の生涯を重ねると、歌の不安がいっそう切実に感じられます。

出典:新古今集(恋三・1149番)。詞書:中関白(藤原道隆)が作者のもとに通いはじめたころによんだ歌。

決まり字・覚え方

決まり字

上の句 下の句
わすれじの ゆくすえまでは かたければ けふをかきりの いのちともかな

決まり字は「わすれ」の三字決まりです。同じ「わす」で始まる札に、38番「忘らるる」(決まり字「わすら」)があります。3文字目の「れ」で区別しましょう。

ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。

覚え方

忘れ鳥(字札で「とり」が並ぶ)(友札は「わすら餅」)

語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。

確認問題

「答えを見る」を押すと答えが開きます。

問1 上の句「忘れじの 行く末までは かたければ」に続く下の句は?

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今日を限りの 命ともがな

問2 この歌の決まり字は?

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わすれ(三字決まり)

問3 この歌の作者は?

答えを見る

儀同三司母

問4 「今日を限りの命ともがな」の「もがな」の品詞と意味を答えなさい。

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願望の終助詞です。「〜であればなあ」という意味で、ここでは「今日で終わる命であってほしい」と願っています。

前後の歌・関連ページ

参考にした資料

確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。

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