百人一首14番は、河原左大臣の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第14首の歌
| 和歌 | 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに |
|---|---|
| ひらがな | みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに |
| 読み方 | みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに |
| 歌番号 | 14 |
| 歌集 | 古今集 |
| 部立 | 恋四・724番 |
| 作者・歌人 | 河原左大臣 |
| 色札 | 青札 |
意味・現代語訳
陸奥の信夫に産する「しのぶもぢずり」の布は、ねじれた模様が入り組んでいる。私の心もその模様さながらに乱れはじめた。ほかの誰かのためになら、こんなふうに心を乱す私ではなかったのに。(つまりは、あなたゆえなのだ。)
ひとことで言うと、乱れ模様の染め物に心の乱れを重ね、それはあなたへの恋のせいだと訴えた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 陸奥(みちのく) | 今の東北地方の東側にあたる国。都から遠く離れた土地として歌によまれた。 |
| しのぶもぢずり | 陸奥の信夫(今の福島市のあたり)で作られたという、ねじれたような乱れ模様の摺り染めの布。 |
| 誰ゆゑに | 誰のせいで。「ゆゑ」は原因や理由を表す名詞。 |
| 乱れそめにし | 思いが乱れるようになってしまった。「そめ」は物事の始まりを表す「初め」で、しのぶもぢずりを「染め」る意味もかかる。 |
| われならなくに | 「(そんな)私ではないのに」。断定の「なり」を打ち消し、逆接でつなぐ言い方。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 陸奥 | 名詞 | 「みちのく」と読む |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| しのぶもぢずり | 名詞 | 乱れ模様の摺り染めの布 |
| 誰 | 代名詞 | 「たれ」と読む |
| ゆゑ | 名詞 | 原因・理由(〜のせい) |
| に | 格助詞 | 原因・理由(〜で) |
| 乱れそめ | 動詞(マ行下二段活用・連用形) | 基本形「乱れそむ」。乱れはじめる |
| に | 助動詞「ぬ」(連用形・完了) | 〜てしまった |
| し | 助動詞「き」(連体形・過去) | 〜た。下の「われ」を修飾する |
| われ | 代名詞 | 私 |
| なら | 助動詞「なり」(未然形・断定) | 〜である |
| なく | 助動詞「ず」の未然形「な」+接尾語「く」 | 〜ないこと(ク語法) |
| に | 接続助詞 | 逆接(〜のに)。「なくに」で「〜ないのに」 |
文法のポイント
- 「乱れそめにし」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。「し」は連体形なので下の「われ」を修飾し、「乱れはじめてしまった私」という意味になります。
- 「ならなくに」の「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形、「なく」は打消の助動詞「ず」の古い未然形「な」に接尾語「く」が付いた形(ク語法)、「に」は接続助詞です。「なくに」で「〜ないのに」と訳します。
- 「誰ゆゑに」の「ゆゑ」は原因や理由を表す名詞で、「〜のせいで・〜のために」と訳します。「誰ゆゑに…われならなくに」で、ほかの誰のためでもない、つまり相手のせいだという気持ちを遠回しに伝えています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。「乱れそめにし」の「し」が連体形で下の「われ」にかかるため、一首がひと続きになっています。 |
| 序詞 | 陸奥のしのぶもぢずり | 乱れ模様の布「しのぶもぢずり」を示して、第四句の「乱れ」を導く序詞です。 |
| 掛詞 | そめ | 「乱れそめ」の「そめ」に、「〜しはじめる」という意味の「初め」と、布を「染め」るという意味を掛けています。 |
| 縁語 | しのぶもぢずり・乱れ・そめ | 染め物の「しのぶもぢずり」と関係の深い「乱れ」「染め」が、縁語として使われています。 |
作者:河原左大臣
河原左大臣(かわらのさだいじん)。一般には「源融(みなもとのとおる)」とも呼ばれます。
822年〜895年。父は嵯峨天皇ですが、源の姓を与えられて臣下の身分となりました。872年に左大臣となり、887年には従一位に進みました。884年に陽成天皇が位を退いたときには、天皇の血筋である自分も候補になれると申し出たものの、藤原基経に退けられたという話が『大鏡』に見えます。京の六条あたり、鴨川沿いに河原院と呼ばれる広い邸宅を構え、その庭に陸奥の塩釜の景色を写したことで知られます。そこから「河原左大臣」の呼び名が生まれました。融が宇治に構えた別荘は、長い年月を経て平等院へと姿を変えました。
歌の背景と鑑賞
『古今和歌集』の恋四に「題しらず」として収められています。「しのぶもぢずり」は陸奥の信夫地方の産物とされる摺り染めの布で、ねじれたような乱れ模様が特徴でした。作者はその模様を思い浮かべさせながら自分の心の乱れを表し、「ほかの人のためにこうなる私ではない」と言うことで、原因は相手にあると遠回しに訴えています。「しのぶ」という地名が、人目を忍ぶ恋を連想させることも、この歌の味わいを深めています。『伊勢物語』の第一段にもこの歌が登場し、主人公の男が姉妹に贈った「春日野の若紫のすり衣しのぶの乱れ限り知られず」は、この歌の心をふまえたものだと物語の中で説明されています。なお、古今集の本文では、第四句が「乱れむと思ふ」という形です。
出典:古今集(恋四・724番)。詞書:題しらず
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| みちのくの しのぶもじずり たれゆえに | みたれそめにし われならなくに |
決まり字は「みち」の二字決まりです。「み」で始まる札はほかに4枚あり、2文字目の「ち」で決まります。
覚え方
みちのく(陸奥)の人はしわが多い
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに」に続く下の句は?
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乱れそめにし われならなくに
問2 この歌の決まり字は?
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みち(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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河原左大臣
問4 「乱れそめにし」の「し」の文法的な説明をし、それがどの語にかかっているかを答えなさい。
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過去の助動詞「き」の連体形です。連体形なので下の「われ」を修飾し、「乱れはじめてしまった私」という意味になります。
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- 同じ色札の20首:青札の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「古今集」
- 古今和歌集 巻第十四 恋歌四(歌番号付き古典本文)
- 全日本かるた協会 一日一首「みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにし我ならなくに」
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」14番
- 千人万首 源融
- 百人一首で始める古文書講座(14)(岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首14 現代語訳と解説
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)14番
- 短歌のこと 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに
- コトバンク「源融」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・世界大百科事典・日本大百科全書ほか)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。