百人一首40番は、平兼盛の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第40首の歌
| 和歌 | しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで |
|---|---|
| ひらがな | しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで |
| 読み方 | しのぶれど いろにいでにけり わがこいわ ものやおもうと ひとのとうまで |
| 歌番号 | 40 |
| 歌集 | 拾遺集 |
| 部立 | 恋一・622番 |
| 作者・歌人 | 平兼盛 |
| 色札 | 桃札(ピンク札) |
意味・現代語訳
私の恋心は、隠し通そうとしてきたのに、ついに顔つきにまで表れ出たのだなあ。「何か思いわずらっているのか」と、周りの人が尋ねてくるくらいに。
ひとことで言うと、隠してきた恋心が顔に出て、人に気づかれてしまったことをよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| しのぶれど | 恋心が表に出ないよう、胸の内に押しとどめてはいたが。「しのぶ」は上二段活用の動詞で、耐えて隠す意。 |
| 色に出づ | 心の中の思いが、顔色や表情、しぐさに表れること。恋の歌でよく使われる言い方。 |
| ものや思ふ | 何か思い悩んでいるのか。ここでの「物思ふ」は、恋のためにあれこれ悩むこと。 |
| 人の問ふまで | 他人が尋ねてくるほどに。「まで」は、そこまで達するという程度を表す。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| しのぶれ | 動詞(バ行上二段活用「しのぶ」・已然形) | こらえる、隠す |
| ど | 接続助詞 | 逆接の確定条件(〜けれど) |
| 色 | 名詞 | 顔色、表情 |
| に | 格助詞 | 場所(〜に) |
| 出で | 動詞(ダ行下二段活用「出づ」・連用形) | 表に出る |
| に | 助動詞「ぬ」(連用形・完了) | 〜てしまった |
| けり | 助動詞「けり」(終止形・詠嘆) | ここで文が切れる |
| わ | 代名詞 | 私 |
| が | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 恋 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 取り立て。「色に出でにけり」の主語にあたる |
| 物 | 名詞 | |
| や | 係助詞 | 疑問。結びは「思ふ」(連体形) |
| 思ふ | 動詞(ハ行四段活用「思ふ」・連体形) | 「や」の結び |
| と | 格助詞 | 引用(〜と) |
| 人 | 名詞 | 他人 |
| の | 格助詞 | 主格(〜が) |
| 問ふ | 動詞(ハ行四段活用「問ふ」・連体形) | 尋ねる |
| まで | 副助詞 | 程度(〜ほどに) |
文法のポイント
- 「出でにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆の助動詞の終止形です。「にけり」は「〜てしまったことだ」と訳す組み合わせです。
- 「ものや思ふ」の「や」は疑問の係助詞で、結びの「思ふ」が連体形になっています(係り結び)。四段活用の「思ふ」は終止形と連体形が同じ形なので注意しましょう。
- 「問ふまで」の「まで」は、「〜ほどに」と程度を表す副助詞です。人に尋ねられるほどまで、恋心が表に出ていたことを示しています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 二句切れ。「色に出でにけり」の「けり」でいったん言い切り、主語の「わが恋は」を後に置いています。「わが恋は」の後でも切れるとして、二句切れ・三句切れとする説明もあります。 |
| 倒置 | 色に出でにけり わが恋は | ふつうの語順なら「わが恋は色に出でにけり」となるところを入れかえています。下の句「ものや思ふと人の問ふまで」も、意味の上では「色に出でにけり」にかかります。 |
作者:平兼盛
平兼盛(たいらのかねもり)。
生年不詳で、990年に亡くなりました。光孝天皇の玄孫で、篤行の子です。950年に「平」の姓を受けて皇族を離れ、臣下の身分になりました(もとの名は兼盛王だったとみられます)。役人としては駿河守まで進み、位は従五位上でした。屏風絵に書き添える歌を頼まれることが多く、960年の天徳内裏歌合をはじめ、歌合の場でも活躍して、『後撰集』の時代を代表する歌人の一人とされます。赤染衛門の実の父とする説もあります。三十六歌仙の一人で、家集に『兼盛集』があります。
歌の背景と鑑賞
『拾遺集』恋一に収められ、詞書は「天暦御時歌合」です。これは天徳4年(960年)に村上天皇が宮中で開いた歌合のことで、この歌は最後の二十番で、壬生忠見の「恋すてふ」の歌(41番)と組み合わされました。どちらもすぐれていたため、判者の藤原実頼は勝ち負けを決めかねました。そのとき村上天皇がひそかにこの歌を口ずさんだので、兼盛の勝ちになったと伝えられています。周りの人の「ものや思ふ」という問いかけを歌の中にそのまま取り込み、隠していたはずの恋が他人の目にははっきり見えていたことを示しているのが工夫です。『拾遺集』では、この歌は忠見の歌のすぐ後に並べられています。
出典:拾遺集(恋一・622番)。詞書:村上天皇の時代の歌合(天徳4年〈960年〉の内裏歌合)でよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| しのぶれど いろにいでにけり わがこいは | ものやおもふと ひとのとふまて |
決まり字は「しの」の二字決まりです。同じ「し」で始まる札に、37番「白露に」(決まり字「しら」)があります。2文字目の「の」で区別しましょう。
覚え方
もの→しの(「も」と「し」は似ている)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は」に続く下の句は?
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物や思ふと 人の問ふまで
問2 この歌の決まり字は?
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しの(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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平兼盛
問4 この歌で語順が入れかわっている部分を指摘し、ふつうの語順に直しなさい。
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「色に出でにけりわが恋は」の部分です。ふつうの語順に直すと「わが恋は色に出でにけり」となります。主語の「わが恋は」を後ろに回した倒置になっています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:39番 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど
- 次の歌:41番 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
- 同じ色札の20首:桃札(ピンク札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「拾遺集」
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」40番
- マナペディア 百人一首40 現代語訳と解説
- 百人一首で始める古文書講座(40)
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)40番
- 二階の窓から 百人一首040 品詞分解と解説
- 千人万首(やまとうた)平兼盛
- コトバンク「平兼盛」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・世界大百科事典・日本大百科全書ほか)
- コトバンク「天徳内裏歌合」(世界大百科事典)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。