百人一首46番は、曾禰好忠の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第46首の歌
| 和歌 | 由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな |
|---|---|
| ひらがな | ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな |
| 読み方 | ゆらのとを わたるふなびと かじをたえ ゆくえもしらぬ こいのみちかな |
| 歌番号 | 46 |
| 歌集 | 新古今集 |
| 部立 | 恋一・1071番 |
| 作者・歌人 | 曾禰好忠 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
潮が激しく出入りする由良の門(と)を渡っていく舟の漕ぎ手が、櫂や櫓を失って、波にもまれるままになっている。私の恋もちょうどその舟のようで、どこへ行き着くのか、自分でもまるで見通せない道のりだなあ。
ひとことで言うと、櫂を失って漂う舟に、先の見えない自分の恋を重ねた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 由良のと | 由良の門(と)。「門」は舟が行き来する水の出入り口。ここでは、潮の満ち引きで流れが荒くなる由良の水路の入り口をいう。 |
| 舟人(ふなびと) | 舟をこいで人や荷物を運ぶことを仕事にしている人。船頭。 |
| かぢ | 舟人が水をかき、舟を前へ押し出す櫂(かい)や櫓(ろ)。向きを変える今の「舵」とは別物で、失えば舟は波まかせになる。 |
| 絶え | ここでは、手にしていた櫂や櫓がなくなってしまうこと。 |
| ゆくへ | 舟が流れていく先と、恋がこの先どうなるかという見通しの両方を指している。 |
| 恋の道 | 恋を、先へ先へと進んでいく道にたとえた言い方。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 由良 | 名詞 | 地名 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| と | 名詞 | 「門」。海峡や河口など、水が出入りする狭い所 |
| を | 格助詞 | 通っていく場所(〜を) |
| 渡る | 動詞(ラ行四段活用「渡る」・連体形) | 下の「舟人」にかかる |
| 舟人 | 名詞 | 船頭 |
| かぢ | 名詞 | 櫂や櫓 |
| を | 格助詞 | 間投助詞とする説明や、「かぢを」を「梶緒(櫂をつなぐ綱)」と見る説もある |
| 絶え | 動詞(ヤ行下二段活用「絶ゆ」・連用形) | なくなる |
| ゆくへ | 名詞 | 行き先。将来 |
| も | 係助詞 | 強調 |
| 知ら | 動詞(ラ行四段活用「知る」・未然形) | |
| ぬ | 助動詞「ず」(連体形・打消) | 下の「恋」にかかる |
| 恋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 道 | 名詞 | |
| かな | 終助詞 | 詠嘆(〜だなあ) |
文法のポイント
- 「知らぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、下の名詞「恋」にかかっています。完了の「ぬ」(終止形)と形が同じなので、上の語が未然形か連用形かで見分けます。
- 「絶え」はヤ行下二段活用「絶ゆ」の連用形です。「絶ゆ」「燃ゆ」「消ゆ」などはヤ行の動詞なので、活用は「え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ」となります。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。上の句の舟のようすから下の句の恋の嘆きまで、一続きになっています。 |
| 序詞 | 由良のとを渡る舟人かぢを絶え | 「ゆくへも知らぬ」を導く序詞です。櫂をなくして漂う舟の姿を示して、先の見えない恋のたとえにしています。 |
| 縁語 | 「と」「渡る」「舟人」「かぢ」「ゆくへ」「道」 | 舟で海を渡ることに関係する言葉を重ねて、恋を海の道になぞらえています。どの語を縁語に数えるかは資料によって違いがあります。 |
作者:曾禰好忠
曾禰好忠(そねのよしただ)。
生没年不詳。923年ごろの生まれとみる説があります。官職は丹後国の三等官にあたる丹後掾(たんごのじょう)で、姓の一字と合わせて「曾丹後」、さらに縮めて「曾丹(そたん)」と呼ばれました。それまでの和歌が避けてきた俗な言葉もためらわずに取り入れ、百首をまとめてよむ百首歌や、一日一首ずつ一年分をたどる「毎月集」など、それまでにない形の作品を残しています。985年には、円融院が紫野で開いた子(ね)の日の遊びに、呼ばれてもいないのに押しかけて追い返されたという話が残っています。中古三十六歌仙の一人で、家集に『曾丹集』があります。
歌の背景と鑑賞
新古今集の恋歌一に「題しらず」として入っている歌です。上の句から「かぢを絶え」までで、潮がぶつかり合う海の出入り口で櫂や櫓を失い、どうすることもできずに漂う舟の姿を描きます。そのうえで「ゆくへも知らぬ」を境に、先の見えない自分の恋へと話を移しています。舟の情景がそのまま恋の不安のたとえになっているところが見どころです。「由良の門」がどこかについては、作者が丹後掾だったことから丹後国の由良川の河口(今の京都府宮津市)とする説と、紀伊国や淡路島のあたりの由良とする説があり、決まっていません。「かぢを」についても、「梶緒(櫂をつなぐ綱)」と読んで「綱が切れて」と解く説があります。
出典:新古今集(恋一・1071番)。詞書:題しらず
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| ゆらのとを わたるふなびと かじをたえ | ゆくへもしらぬ こひのみちかな |
決まり字は「ゆら」の二字決まりです。同じ「ゆ」で始まる札に、71番「夕されば」(決まり字「ゆう」)があります。2文字目の「ら」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
ゆらゆら(字札の右上にも「ゆら」と並んでいます)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え」に続く下の句は?
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ゆくへも知らぬ 恋の道かな
問2 この歌の決まり字は?
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ゆら(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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曾禰好忠
問4 この歌で、初句から「かぢを絶え」までが「ゆくへも知らぬ」を導いています。このような表現技法を何といいますか。
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序詞です。櫂を失って漂う舟の様子を先に示すことで、行く先のわからない恋の不安を印象づけています。
前後の歌・関連ページ
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- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
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- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「新古今集」
- 新古今和歌集 巻十一 恋歌一(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」46番
- 百人一首で始める古文書講座(46)
- マナペディア 百人一首46 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首046 品詞分解と解説
- 百人一首46番(programming-cafe)
- 千人万首 曾禰好忠
- コトバンク「曾禰好忠」(精選版 日本国語大辞典・世界大百科事典・デジタル版 日本人名大辞典)
- コトバンク「由良の門」(デジタル大辞泉)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。