百人一首55番は、藤原公任の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第55首の歌
| 和歌 | 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ |
|---|---|
| ひらがな | たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ |
| 読み方 | たきのおとわ たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なおきこえけれ |
| 歌番号 | 55 |
| 歌集 | 千載集 |
| 部立 | 雑上・1035番 |
| 作者・歌人 | 藤原公任 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
この滝が水音を立てなくなって、もはや長い時が過ぎた。けれども(見事な滝だったという)評判のほうは、(水に代わって)世の中へと流れ出し、今もなお人々の耳に届きつづけていることよ。
ひとことで言うと、水の枯れた古い滝を前に、その評判だけは今も語り継がれていることをよんだ歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 絶ゆ(たゆ) | 続いていたものが途中で切れること。ここでは滝の水が枯れ、音がしなくなったことをいう。 |
| 名(な) | 呼び名そのものではなく、世間での評判やうわさのこと。 |
| 流る(ながる) | 水が流れる意味に、評判が世の中へ広まっていく意味を重ねて使っている。 |
| なほ | 状況が変わっても、そのまま続いていることを表す副詞。ここでは、水音はとうに消えたのに評判だけは今も、という気持ち。 |
| 聞こゆ(きこゆ) | 音が耳に入ること。ここでは、評判が人々に知れわたっている意味にも使っている。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 滝 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 音 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 話題として取り立てる(〜は) |
| 絶え | 動詞(ヤ行下二段活用・連用形) | 基本形「絶ゆ」。とだえる |
| て | 接続助詞 | 単純な接続(〜て) |
| 久しく | 形容詞(シク活用・連用形) | 基本形「久し」。長い時間がたっている |
| なり | 動詞(ラ行四段活用・連用形) | 基本形「なる」 |
| ぬれ | 助動詞「ぬ」(已然形・完了) | 〜てしまった |
| ど | 接続助詞 | 逆接の確定条件(〜けれども)。已然形に付く |
| 名 | 名詞 | 評判 |
| こそ | 係助詞 | 強意。結びは已然形 |
| 流れ | 動詞(ラ行下二段活用・連用形) | 基本形「流る」。広く伝わる |
| て | 接続助詞 | 単純な接続(〜て) |
| なほ | 副詞 | それでもやはり・今もなお |
| 聞こえ | 動詞(ヤ行下二段活用・連用形) | 基本形「聞こゆ」。知れわたる |
| けれ | 助動詞「けり」(已然形・詠嘆) | 「こそ」の結び。〜ことだ |
文法のポイント
- 「名こそ流れてなほ聞こえけれ」では、係助詞「こそ」を受けて、文末の助動詞「けり」が已然形の「けれ」になっています(係り結び)。「こそ」は強調の働きで、「評判こそは」と「名」を際立たせています。
- 「なりぬれど」の「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形です。已然形に接続助詞「ど」が付くと、「〜けれども」という逆接の確定条件になります。
- 「けり」は過去を表すこともありますが、和歌の中で今あらためて気づいた感動を表すときは詠嘆の意味で、「〜ことだ」「〜だなあ」と訳します。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。一首が最後の「けれ」まで切れずに続いています。 |
| 縁語 | 「音」「絶え」「流れ」「聞こえ」 | 「音」「絶え」「流れ」「聞こえ」は、どれも「滝」と結びつきの強い言葉(縁語)です。滝のことを述べる言葉を使って、評判が世の中に広まっていくようすも表しています。 |
作者:藤原公任
藤原公任(ふじわらのきんとう)。百人一首での作者名は「大納言公任(だいなごんきんとう)」です。
966年〜1041年。関白太政大臣藤原頼忠の長男で、名門の小野宮家に生まれました。正二位権大納言まで進み、四条大納言と呼ばれました。和歌・漢詩・管弦のすべてにすぐれ、藤原道長の時代の歌壇で指導的な立場にありました。どの分野の船に乗っても活躍できるとたたえられた「三船の才」の逸話が伝えられています。『和漢朗詠集』や『拾遺抄』『三十六人撰』を編み、歌論書『新撰髄脳』も書きました。64番の作者・藤原定頼の父です。
歌の背景と鑑賞
『千載集』の詞書によると、嵯峨の大覚寺を訪れた際によまれた歌です。大覚寺は嵯峨天皇の離宮だった所で、公任が訪れたころには、庭の滝の水はもう流れていませんでした。この歌は先に『拾遺集』にも初句「滝の糸は」の形で収められており、注釈書では、藤原道長が嵯峨に遊んだ折に同行してよんだものとされています。味わいどころは、とうに途絶えた水音と、今なお世に伝わる名声との取り合わせです。「絶え」「流れ」「聞こえ」と滝にちなむ言葉を重ねて、名声が伝わっていくようすを描いています。各句の頭の音が「た・た・な・な・な」とそろい、声に出すと調子のよい歌でもあります。滝の石組みは今も大覚寺の大沢池のそばに残り、「名古曽の滝跡」と呼ばれています。
出典:千載集(雑上・1035番)。詞書:嵯峨の大覚寺に出かけ、居合わせた人々がそれぞれ歌をよんだ折によんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| たきのおとは たえてひさしくなりぬれど | なこそなかれて なほきこえけれ |
決まり字は「たき」の二字決まりです。「た」で始まる札はほかに5枚あり、2文字目の「き」で決まります。
覚え方
なこその滝(京都・大覚寺にある滝)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど」に続く下の句は?
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名こそ流れて なほ聞こえけれ
問2 この歌の決まり字は?
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たき(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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藤原公任(百人一首での作者名は「大納言公任」)
問4 「名こそ流れてなほ聞こえけれ」で、文末が「けれ」になっている理由を説明しなさい。
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前にある係助詞「こそ」と係り結びになっているためです。「こそ」があると文末は已然形で結ぶので、助動詞「けり」が已然形の「けれ」になっています。
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- 同じ色札の20首:黄札(黄色)の一覧と練習
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「千載集」
- 千載和歌集 巻十六 雑上(歌番号付き古典本文)
- 拾遺和歌集 巻第八 雑上(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」55番
- 百人一首で始める古文書講座(55)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首55 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首055 品詞分解と解説
- 百人一首 55番(programming-cafe)
- コトバンク「藤原公任」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典ほか)
- 旧嵯峨御所 大本山 大覚寺「大沢池エリアのご案内」
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。