百人一首37番は、文屋朝康の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第37首の歌
| 和歌 | 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける |
|---|---|
| ひらがな | しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける |
| 読み方 | しらつゆに かぜのふきしく あきののわ つらぬきとめぬ たまぞちりける |
| 歌番号 | 37 |
| 歌集 | 後撰集 |
| 部立 | 秋中・308番 |
| 作者・歌人 | 文屋朝康 |
| 色札 | 黄札 |
意味・現代語訳
秋の野では、(草の葉に宿った)白露へ風が次々と吹きかかっている。その露は、ひもを通してつなぎ合わせていない玉のように、ばらばらにこぼれ飛んでいくことだ。
ひとことで言うと、風に飛び散る草葉の白露を、ひもに通していない玉が散るさまに見立てた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 白露(しらつゆ) | 草の葉などに置き、光を受けて白く輝いて見える露のしずく。 |
| 吹きしく | 「しく」は次々と重なって起こる意。風がやむことなく吹きつけること。 |
| つらぬきとめぬ | ひもを通して一つにまとめていない。玉がばらばらのままである様子を表す。 |
| 玉 | 美しい石や真珠など、ひもに通して飾りにした宝玉。ここでは露の粒のたとえ。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 白露 | 名詞 | 「しらつゆ」と読む |
| に | 格助詞 | 対象(〜に) |
| 風 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格(〜が) |
| 吹きしく | 動詞(カ行四段活用「吹きしく」・連体形) | しきりに吹く。下の「秋の野」にかかる |
| 秋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 野 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 取り立て(〜は) |
| つらぬきとめ | 動詞(マ行下二段活用「つらぬきとむ」・未然形) | ひもを通して留める |
| ぬ | 助動詞「ず」(連体形・打消) | 〜ない。下の「玉」にかかる |
| 玉 | 名詞 | 露のたとえ |
| ぞ | 係助詞 | 強調。結びは「ける」(連体形) |
| 散り | 動詞(ラ行四段活用「散る」・連用形) | |
| ける | 助動詞「けり」(連体形・詠嘆) | 〜ことだ。「ぞ」の結び |
文法のポイント
- 「玉ぞ散りける」は係り結びです。強調の係助詞「ぞ」を受けて、文末の助動詞「けり」が連体形の「ける」になっています。
- 「つらぬきとめぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形です。下二段の「とめ」は未然形も連用形も同じ形なので、上の語だけでは決められません。下の名詞「玉」を修飾する連体形で、完了の「ぬ」なら連体形は「ぬる」になるため、打消と判断します。
- 「吹きしく」は「吹く」と「しく(頻く)」が合わさった複合動詞で、「しきりに吹く」という意味です。連体形で下の「秋の野」を修飾しています。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。最後の「ける」まで一続きの文です。 |
| 見立て | つらぬきとめぬ玉 | 風に飛び散る白露を、ひもを通していないためにばらばらにこぼれる玉に見立てています。露を玉にたとえるのは和歌によくある発想ですが、この歌は風に散る動きまでとらえています。 |
作者:文屋朝康
文屋朝康(ふんやのあさやす)。
生没年不詳。22番の作者、文屋康秀の子です。知られている官職は、『古今和歌集目録』にある892年の駿河掾と902年の大舎人大允で、どちらも下級の役職です。和歌では、宇多天皇の時代に催された是貞親王家歌合や寛平御時后宮歌合に作品が残っています。勅撰集に採られたのは『古今集』の1首と『後撰集』の2首の計3首で、この歌はそのうちの1首です。
歌の背景と鑑賞
『後撰集』秋中に収められ、詞書には「延喜御時、歌めしければ」とあります。醍醐天皇の時代に、天皇の求めに応じて差し出した歌という意味です。ただ、この歌はそれより前の宇多天皇の時代に開かれた「寛平御時后宮歌合」にも見えるため、詞書の事情には疑問があるとする指摘もあります。秋の野の草葉には、白く光る露がいくつも置いています。そこへ風が強く吹きつけると、露は一斉にこぼれ飛びます。その様子を、ひもに通していない玉がばらばらにこぼれていく姿にたとえました。風に吹かれて飛び散る一瞬の動きを美しくとらえている点が、この歌の読みどころです。
出典:後撰集(秋中・308番)。詞書:醍醐天皇の時代(延喜のころ)、天皇から歌を差し出すよう求められてよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| しらつゆに かぜのふきしく あきののは | つらぬきとめぬ たまそちりける |
決まり字は「しら」の二字決まりです。同じ「し」で始まる札に、40番「しのぶれど」(決まり字「しの」)があります。2文字目の「ら」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
つら→しら(「つ」と「し」はよく似ています)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「白露に 風の吹きしく 秋の野は」に続く下の句は?
答えを見る
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
問2 この歌の決まり字は?
答えを見る
しら(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
答えを見る
文屋朝康
問4 「玉ぞ散りける」の係り結びについて、係助詞と結びの語、その活用形を答えなさい。
答えを見る
係助詞は強調の「ぞ」で、結びは詠嘆の助動詞「けり」の連体形「ける」です。「ぞ・なむ・や・か」は連体形で結びます。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:36番 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
- 次の歌:38番 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
- 同じ色札の20首:黄札(黄色)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:秋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「後撰集」
- 後撰和歌集 巻第六 秋歌中(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」37番
- マナペディア 百人一首37 現代語訳と解説
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)37番
- 二階の窓から 百人一首037 品詞分解と解説
- 百人一首で始める古文書講座(37)
- 千人万首(やまとうた)文屋朝康
- コトバンク「文屋朝康」(日本人名大辞典+Plus)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。