百人一首49番は、大中臣能宣の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第49首の歌
| 和歌 | みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ |
|---|---|
| ひらがな | みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ |
| 読み方 | みかきもり えじのたくひの よるわもえ ひるわきえつつ ものをこそおもえ |
| 歌番号 | 49 |
| 歌集 | 詞花集 |
| 部立 | 恋上・225番 |
| 作者・歌人 | 大中臣能宣 |
| 色札 | 橙札(オレンジ札) |
意味・現代語訳
内裏の門を夜通し見張る衛士(えじ)のかがり火は、夜のあいだ燃えさかっていても、昼が来ると消えてしまう。私の恋心もその火と同じで、夜ごとに燃え立っては、昼になると生きた心地もしないほどしぼんでしまう。そのくり返しの中で、ひたすら思い悩まずにはいられない。
ひとことで言うと、夜は燃え昼は消えるかがり火に、昼と夜とで揺れ動く恋の苦しみを重ねた歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| みかきもり | 御垣守。天皇の住まいを囲む垣(御垣)の門を守る者のこと。 |
| 衛士(ゑじ) | 地方の国々から都へ送られてきた兵士たち。この歌では御垣守と同じ人々で、夜になるとかがり火をたいて門の番をした。 |
| たく火 | 夜の警備のためにたくかがり火。燃えたり消えたりする様子が恋心のたとえになっている。 |
| 消えつつ | 火が消えることに、心が沈んで生きた心地もしないことを重ねている。「つつ」はくり返しを表す。 |
| 物を思ふ | 恋のことであれこれと思い悩むこと。「物」は漠然と物事を指す言葉。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| みかきもり | 名詞 | 御垣守。宮中の門を守る者 |
| 衛士 | 名詞 | 「ゑじ」と読む |
| の | 格助詞 | 主格(〜が) |
| たく | 動詞(カ行四段活用「たく」・連体形) | 下の「火」にかかる |
| 火 | 名詞 | かがり火 |
| の | 格助詞 | 主格(〜が)。序詞の終わりで比喩(〜のように)と見る説明もある |
| 夜 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 対比(〜は) |
| 燃え | 動詞(ヤ行下二段活用「燃ゆ」・連用形) | 連用中止法で下に続く |
| 昼 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | 対比(〜は) |
| 消え | 動詞(ヤ行下二段活用「消ゆ」・連用形) | |
| つつ | 接続助詞 | 反復・継続 |
| 物 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | 対象(〜を) |
| こそ | 係助詞 | 強意。結びは已然形「思へ」 |
| 思へ | 動詞(ハ行四段活用「思ふ」・已然形) | 「こそ」の結び |
文法のポイント
- 「物をこそ思へ」は、係助詞「こそ」の結びが已然形「思へ」になる係り結びです。文末で係り結びが成立しているので逆接にはならず、「思い悩むことだ」と強める意味になります。
- 「燃え」「消え」はヤ行下二段活用「燃ゆ」「消ゆ」の連用形です。「夜は燃え」の「燃え」は、連用形で文をいったん止めて下に続ける連用中止法の使い方です。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 句切れなし。結句の「思へ」まで一続きで、最後に係り結びで強く言い切っています。 |
| 序詞 | みかきもり衛士のたく火の | 宮中のかがり火を描いた上の二句が序詞です。かがり火が夜は燃え昼は消えるように、作者の恋心も燃えたり沈んだりすることを表しています。 |
| 対句 | 夜は燃え/昼は消えつつ | 「夜」と「昼」、「燃え」と「消え」を対にして並べ、恋心の激しい浮き沈みを印象づけています。 |
作者:大中臣能宣
大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)。百人一首での作者名は「大中臣能宣朝臣(おおなかとみのよしのぶあそん)」です。
921年〜991年。伊勢神宮の祭主だった大中臣頼基の子で、自身ものちに祭主となりました。951年、清原元輔(42番)・源順らとともに「梨壺の五人」に選ばれ、『万葉集』に読み方をつける作業と『後撰和歌集』の編集にあたりました。歌合にもたびたび加わり、960年の天徳内裏歌合でも歌をよんでいます。貴族の注文に応じて屏風絵に添える歌を多く手がけ、宮廷で重んじられた歌人でした。三十六歌仙の一人で、家集に『能宣集』があります。61番の作者伊勢大輔は孫にあたります。
歌の背景と鑑賞
詞花集では「題しらず」として恋の歌の中に入っています。宮中の門を守る衛士は、夜になるとかがり火をたいて警備をしました。暗がりに燃えさかり、朝には跡形もなくなるその火は、そのまま作者の恋心のたとえになっています。夜が来ると思いがつのって燃え立ち、昼間は気力が失せてしぼんでしまう、という心の浮き沈みが託されています。「夜」と「昼」、「燃え」と「消え」を向かい合わせた組み立ても明快で、暗い宮中に揺れる炎の色まで思い描ける歌です。ただし、この歌は能宣の家集『能宣集』には見えません。また『古今和歌六帖』に、作者のわからない「君がもる衛士のたく火の昼はたえ夜はもえつつ物をこそ思へ」という歌があります。そのため、この歌が形を変えて伝わり、能宣の作とされたのではないかとする説があります。
出典:詞花集(恋上・225番)。詞書:題しらず
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| みかきもり えじのたくひの よるはもえ | ひるはきえつつ ものをこそおもへ |
決まり字は「みかき」の三字決まりです。同じ「みか」で始まる札に、27番「みかの原」(決まり字「みかの」)があります。3文字目の「き」で区別しましょう。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
昼にみかんを食べたらきいろくなった(「みかき」を「みかんで黄色」)
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え」に続く下の句は?
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昼は消えつつ 物をこそ思へ
問2 この歌の決まり字は?
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みかき(三字決まり)
問3 この歌の作者は?
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大中臣能宣(百人一首での作者名は「大中臣能宣朝臣」)
問4 「物をこそ思へ」で、「思へ」が已然形になっている理由を説明しなさい。
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上に係助詞「こそ」があるためです。「こそ」の結びは已然形になるという係り結びの決まりによって、ハ行四段活用「思ふ」が已然形「思へ」になっています。
前後の歌・関連ページ
- 前の歌:48番 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
- 次の歌:50番 君がため 惜しからざりし 命さへ
- 同じ色札の20首:橙札(オレンジ札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:恋の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「詞花集」
- 詞花和歌集 巻第七 恋上(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」49番
- 百人一首で始める古文書講座(49)
- マナペディア 百人一首49 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首049 品詞分解と解説
- 百人一首49番(programming-cafe)
- 千人万首 大中臣能宣
- コトバンク「大中臣能宣」(デジタル大辞泉・日本大百科全書・世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典)
- コトバンク「御垣守」「衛士」(デジタル大辞泉)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。