百人一首73番は、大江匡房の歌です。このページでは、意味・現代語訳、品詞分解、表現技法、作者と背景、決まり字と覚え方をまとめています。
意味 / 語句 / 品詞分解 / 表現技法 / 作者 / 背景 / 決まり字 / 確認問題
【百人一首】第73首の歌
| 和歌 | 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ |
|---|---|
| ひらがな | たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ |
| 読み方 | たかさごの おのえのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなん |
| 歌番号 | 73 |
| 歌集 | 後拾遺集 |
| 部立 | 春上・120番 |
| 作者・歌人 | 大江匡房 |
| 色札 | 桃札(ピンク札) |
意味・現代語訳
はるか遠くの高い峰で、桜が花を咲かせたなあ。(せっかくの花がかすんでは困るので、)里近くの低い山には、霞よ、立ちこめないでもらいたい。
ひとことで言うと、遠い山の頂に咲いた桜を見て、手前の山の霞に立たないでほしいと願った歌。
語句の意味
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 高砂(たかさご) | ここでは高い山のこと。播磨国(今の兵庫県高砂市)の地名とする説もある。 |
| 尾の上(をのへ) | 山の頂、峰の上のほう。「峰(を)の上(うへ)」がつまった言い方。 |
| 外山(とやま) | 里のすぐ近くにある、さほど高くない山。遠くに見える「高砂の尾の上」と比べて、こちら側にある山を指す。 |
| 霞 | 春に山や野にたなびく、うすい雲のようなもの。遠くの景色をかすませてしまう。 |
| 立たずもあらなむ | 立たないでいてほしい。「なむ」は、ほかのものに「〜してほしい」と望む気持ちを表す。 |
品詞分解
上の句から順に、1語ずつ分けています。
| 語 | 品詞 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 高砂 | 名詞 | 高い山 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 尾の上 | 名詞 | 「をのへ」と読む。山の頂 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 桜 | 名詞 | |
| 咲き | 動詞(カ行四段活用「咲く」・連用形) | |
| に | 助動詞「ぬ」(連用形・完了) | 〜てしまった、〜た |
| けり | 助動詞「けり」(終止形・詠嘆) | 〜だなあ。ここで意味が切れる |
| 外山 | 名詞 | 「とやま」と読む。人里近くの山 |
| の | 格助詞 | 連体修飾格(〜の) |
| 霞 | 名詞 | |
| 立た | 動詞(タ行四段活用「立つ」・未然形) | (霞が)立ちこめる |
| ず | 助動詞「ず」(連用形・打消) | 〜ないで |
| も | 係助詞 | 強調 |
| あら | 動詞(ラ行変格活用「あり」・未然形) | 補助動詞 |
| なむ | 終助詞 | 他に対する願望(〜してほしい)。未然形に付く |
文法のポイント
- 「咲きにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆の助動詞の終止形です。完了の助動詞と過去(詠嘆)の助動詞を重ねるときは「完了→過去」の順になり、「咲いたのだなあ」と訳します。
- 「あらなむ」の「なむ」は未然形に付き、他に対する願望(〜してほしい)を表す終助詞です。連用形に付く「な(完了「ぬ」の未然形)+む(推量)」や、係助詞の「なむ」と区別しましょう。
- 「立たずもあらなむ」は、「立たずあらなむ」の間に係助詞「も」が入った形です。「ず」は打消の助動詞の連用形、「あら」は補助動詞「あり」の未然形で、全体で「立たないでいてほしい」という意味になります。
表現技法
| 技法 | 箇所 | 説明 |
|---|---|---|
| 句切れ | – | 三句切れ。「咲きにけり」でいったん切れ、後半で手前の山の霞への願いをのべています。 |
作者:大江匡房
大江匡房(おおえのまさふさ)。百人一首での作者名は「権中納言匡房(ごんちゅうなごんまさふさ)」です。
1041年〜1111年。平安時代後期の学者・歌人です。大江匡衡と赤染衛門の曾孫にあたり、学者の家に生まれました。少年のころから学才で名高く、16歳の若さで文章得業生に選ばれています。後三条・白河・堀河の三代の天皇に学問を教える役を務め、正二位権中納言まで進み、大宰権帥にもなりました。朝廷の儀式をまとめた『江家次第』をはじめ多くの著作があり、その話を書きとめた『江談抄』も残っています。
歌の背景と鑑賞
後拾遺集の詞書によると、内大臣藤原師通の家で人々が酒を飲みながら歌をよんだとき、「遥かに山桜を望む」という題でよんだ歌です。はるかな峰の桜が咲いたことへの感動と、その花が霞に隠されはしないかという心配とが、一首の中に並んでいます。遠くの「高砂の尾の上」と近くの「外山」を並べることで、一首の景色に奥行きが生まれています。霞に向かって呼びかけるように願う形にしたことで、はるかな桜をいとおしむ気持ちがよく伝わってきます。掛詞や縁語のような技巧はほとんど使わず、見た景色と願いを素直な言葉で歌っているのも、この歌の持ち味です。
出典:後拾遺集(春上・120番)。詞書:内大臣(藤原師通)の家で人々が酒を飲みながら歌をよんだとき、「遥かに山桜を望む(遠くの山桜をながめる)」という題でよんだ歌。
決まり字・覚え方
決まり字
| 上の句 | 下の句 |
|---|---|
| たかさごの おのえのさくら さきにけり | とやまのかすみ たたすもあらなむ |
決まり字は「たか」の二字決まりです。「た」で始まる札はほかに5枚あり、2文字目の「か」で決まります。
ほかの札の決まり字は、百人一首の決まり字一覧(一字決まりから大山札まで)で確認できます。
覚え方
富山の薬は高い
語呂合わせは暗記のための言葉で、歌の意味とは関係ありません。
確認問題
「答えを見る」を押すと答えが開きます。
問1 上の句「高砂の 尾の上の桜 咲きにけり」に続く下の句は?
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外山の霞 立たずもあらなむ
問2 この歌の決まり字は?
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たか(二字決まり)
問3 この歌の作者は?
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大江匡房(百人一首での作者名は「権中納言匡房」)
問4 「立たずもあらなむ」の「なむ」の意味と接続を答えなさい。
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他に対する願望(〜してほしい)を表す終助詞で、未然形に接続します。ここでは補助動詞「あり」の未然形「あら」に付いて、「立たないでいてほしい」という意味になります。
前後の歌・関連ページ
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- 同じ色札の20首:桃札(ピンク札)の一覧と練習
- 同じテーマの歌:春の歌の一覧
- 百人一首100首の意味・現代語訳の一覧
- 百人一首の覚え方
- 百人一首の練習問題・テスト
参考にした資料
- 国際日本文化研究センター 和歌データベース「後拾遺集」
- 後拾遺和歌集 巻第一 春上(歌番号付き古典本文)
- 小倉山荘「ちょっと差がつく百人一首講座」73番
- 百人一首で始める古文書講座(73)(新日本古典文学大系・岩波古語辞典・歌枕歌ことば辞典の引用あり)
- マナペディア 百人一首73 現代語訳と解説
- 二階の窓から 百人一首073 品詞分解と解説
- 百人一首の意味と解説(programming-cafe)73番
- 千人万首(やまとうた)大江匡房
- コトバンク「大江匡房」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典・日本大百科全書)
確認日:2026年9月30日。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。